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「なんで嫌がるのー」
「セットしてもらったの崩れちゃうでしょ！」
「あ、そっか」
「そうですよ、オニーサン。気をつけてね」
「失礼失礼。……ところでさっきさ、」
「？」
「まーちゃん！！ って言ってなかった？」
「言ったかな、言ったかもしれない」
「言ってたよー。あれもしかして無意識？」
「むりーって言ったのは覚えてる」
「そっか、無意識か……」
「そんな笑顔、……え、なに……？」
「だっていつも言ってくれないんだもん。そこに無意識で出たってうれしいでしょ」
「やだもう、逆に恥ずかしい……」
「この際ずっとまぁちゃんでもいいんだよ」
「ヤ」
「即答……？」
「だって恥ずかしいもん……炎上もヤダ……」
「うーん、炎上は困るか」
じゃあ仕方ない、追々ね。話がついたところでスタッフさんから声をかけられる。花房さんが良ければ撮影開始してもいいですか？
大丈夫だとスッと立ち上がった彼女は、こちらに向けて手を差し出していた。
「……立たないの？」
「いや……うん。ありがとう」
これじゃどっちの休憩かわからない。差し出された手を取りながら、Aのナチュラルイケメン具合に内心で苦笑する。プデュの頃も他の女子練習生から王子様だと騒がれていたのを思い出す。
「あのさ、」
「ん？」
「まぁちゃん来てくれて、うれしかったかも」
にんまりしている。
あーもう！ このこは！！ これだから！！
「……も一回おんぶしとく？」
「勘弁してくださいオニーサン」
おかしそうに笑っている、その横顔は屈託がない。こちらばかり振り回されているのは悔しいけれど、それも悪くないと思ってしまう辺り、俺はもう手遅れなのかもしれない。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
