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「俺はAに借りた本を返しにきたんだよ」
「あ、そうだった、たじずっと玄関いるから呼びにきたんだった。ふたりとも入って。ここで立ち話もどうかと思うし」
彼女の言葉に従って俺たちは揃って部屋にお邪魔する。テレビには何か映画が一時停止されていた。
「本の続きでしょ、ちょっと待って……この辺りだと思うんだけど」
「この部屋、本多いよね」
フェンファンは感心している。
「読みたい本どんどん溜まるから……追いついてないけど。でっかい本棚ほしい。あ、あった」
結局、棚に入り切らず積んでいた中にあったようだ。お礼を言って受け取る。
「あ、俺も借りていっていい？ おすすめとかある？」
「この辺り面白いよ」
Aとフェンファンは頭を突き合わせて本を選びはじめた。長くなりそうだ。手持ち無沙汰になって部屋を観察する。基本的にシンプルだけれど、小物やかわいい紅茶缶なんかがやっぱり女の子の部屋だと思う。
「ありがとー、借りてく」
「お。終わった？」
「うん。前にたじが読んだやつにするって」
「将吾これ面白かった？」
「うん、俺結構好きだった」
「へー、楽しみ。……あ、A。これお礼」
フェンファンはエコバッグの中からりんごを取り出した。
「えー、いいの？」
「安かったから買ったんだけど、あとから二個は買い過ぎたかな〜って思って。もらってくれる？」
「え、俺手ぶらなんだけど。申し訳ない」
「たじ、お気になさらず。フェンファンありがと」
Aは笑ってりんごを突いている。
自分の部屋に戻って、さっそく借りてきた本をめくる。パラパラとしながらふと持ち主の彼女のことを思う。ドアを開けた瞬間の無防備な涙がどうしても忘れられず、内容が頭に入るまでまだ時間がかかりそうだ。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
