ネクタイ ページ22
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ありがたくも2年目のお付き合いとなったコラボ先の会社さんの商品であるスーツに袖を通す。今回はメンズのものを少しだけ手直しして着ることになった。もちろん、ネクタイも締める。
「あれー？ Aちゃんネクタイ自分でできるようになったの？」
シャツの襟を立ててネクタイをセットしていたところ、声をかけてきた迅はもう着替え終わっていた。
「迅早いね」
「そう？ おー、男装の麗人感がすごい。かっこいい」
「うれしい、ありがとう」
「でもネクタイひとりでできる？」
「できるんだなー、これが」
「ウッソ！」
おそらくINIフォルダの入社テストでのタイ結びを思い浮かべているのだろう。学生時代の制服はセーラーだったのでネクタイを結ぶ機会はなかった。プデュの時はループタイ。当然やり方がわからず、最終的には諦めてちょうちょ結びにしておいた(これはこれでアリとの評価をいただいた。メンバーはみんな優しい)。昆布巻きネクタイといい勝負である。
「こうやって、……こうでしょ。それからこう……」
「お、できてる」
「でしょ？」
得意顔を作って迅を見る。彼は小さく拍手をしてくれていた。
「でも長さがなんかおかしい？ バランス悪い気がする」
「うーん、ちょっと直した方がいいかもね」
「……んーんん？ なんかしっくり来ないんですけど……難しいな」
軽やかに迅が笑う。
「Aちゃん、やっぱり結んであげる」
「……オネガイシマス」
何でカタコトなの、ケラケラと笑いながら手を差し出してくるのでネクタイを預ける。
「でもねー、俺も人に結んであげたことないのよ」
「え、じゃあ」
ダメじゃん……と言いかけて、くるりと方向を変えられた。背中から声がする。
「はい、動かないでねー」
そのままバックハグの体勢で迅はネクタイを締めていく。淀みない手つき。
「慣れてるね、早い」
「そりゃね。毎日締めてたからね」
「ディンプルも作ってね」
「りょうかーい……はい、出来上がり」
「ありがとう。…………迅ちゃんあのさ」
はーい、と笑い混じりのお返事。
「いつまでこうしてるつもり？」
「えぇー？ 離れるには惜しいなって」
ぽんぽん、と軽く腕を叩く。離しての意図があるのを迅は笑って軽くスルーしている。ふぅ、ひとつ溜息をついて気にせず動くことにする。
「Aちゃん、後ろに迅背負って何してんの？ 電車ごっこ？」
「理人〜、くっつき虫が離れない。歩きにくい」
たすけてくれと視線を投げてみたけど、肩をすくめて流される。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
