カップにニコちゃんマーク添え ページ20
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大学に入ってから始めたバイト。セイレーンのロゴで有名なコーヒーショップにひどく目立つお客様が来店された。思わずカウンターから観察してしまう。
金髪の男女の二人連れ。ちょっとだけ雰囲気がいかつい。揃ってずいぶんとお洒落でとにかくスタイルがいい。男性はキャップを目深に被っているが、スッと通った鼻筋がとても美しいのがわかる。バケハの女性の方はびっくりするほど小顔だった。顔の半分以上がすっぽり覆われている。……しかし、この二人組。すごく見覚えがある。いや、まさか。推しのアイドルに偶然遭遇するなんて。そんなことある？
「で？ みんな何頼んだかちゃんと覚えてんの？ A」
「十人分メモってきた。間違えてるかもだけど、まあいいや。ひろくんはどうする？」
「適当だなー。うーん、俺はどうするかな……」
今、メニューを見ている男の人は女性に向けてAって言った？ 女性の方は隣の男の人にひろくんって言った？ え、これ。確定では？ 西洸人くんと花房Aちゃん、いわゆる花西ってやつでは？？
「あ、注文いいですか？」
女性の方から声をかけられ、目を合わせると卒倒しそうになった。そこを耐えて接客をする。はい、お伺いします。
「ちょ、A、まっ……」
「だってひろくん決めるのに時間かかるもん。とりあえずみんなの頼むから決めてて」
やっぱりそうだ。カウンターに近づいた二人の顔は、昨日音楽番組で食い入るように見つめたアイドルたちだった。
スマホを見ながらAちゃんは次々に注文していく。
「決まった？」
「うん。……すみません、これも一つ。お願いします」
西くん、やっぱり甘いもの好きなんだ。彼は期間限定メニューをその形の良い指で示していた。
震える指で会計をする。レジを打ち間違えないように慎重に。その間にも二人のおしゃべりは止まらない。わたしはこっそり聞き耳を立てていた。
「しかしAちゃんもツイてないねー？」
「ひろくんうるさいー。でも結構鬼じゃない？ じゃんけんで負けたらドリンク奢りはいいよ。負けたから仕方ない。でも人数分ひとりで持って帰るの、どう考えても無理があるよね？」
「だから有無を言わさず俺が連行されたのか」
「ちょうどこっちも休憩入ったとこだったし。ひろくん合流するタイミングもよかったんだもん。……オニーサンの分も奢るし、手伝って？」
「しゃーない。ここはオニーサンが助けてあげましょう」
「わーい！ オニーサンありがとう！！」
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
