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「今日はAちゃんはひとりだけ入り時間も早かったしな。おつかれさまでございました」
「ご丁寧にありがとうございます」
ぺこりと頭を下げ合う。
「女の人って大変やなあ、髪の毛も綺麗にしてもらっとったね」
「まだそんなに伸びてないのに結い上げてくれて……プロってすごいね」
「なー」
Aちゃんは伸ばしかけの髪を指先で弄って笑う。
「お着物なんて成人式以来だからさ、すごいうれしかったー」
「確かにこういう機会じゃないと着らんしね。今日のは振袖とは違うよな？」
「うん。小紋って言うんだって。さっき教えてもらった」
「あれ柄も可愛かったなあ、よく似合ってたし。ヤマトナデシコって感じ」
威尊、褒めるの上手いから調子乗っちゃいそうと笑う。その頬がもうすっかりいつも通りの血色でほっとする。
「みんなも和装かっこよかったよ」
「ほんま？」
「うん。威尊はいいところのご子息って感じでよかった」
「えー、それ褒めとるん？」
「めちゃくちゃ褒めてるよ！ 品があっていいねってこと。なんだろ……京都の老舗呉服屋さんの跡取りって感じ？」
「お坊ちゃんや」
「そうそう。……あー、こんなこと言ってたら京都行きたくなってきた」
「着物で？」
「うん。お着物で京都の街歩き、一度やってみたかったんだよね」
「あーええなあ、桜の頃とか？」
「すっごい行きたい」
「あったかくなったら一緒行こ。京都旅」
俺が手元のスマホで『京都 着物レンタル カップル』と検索かけるのをAちゃんは笑っている。
「カップルは違うんじゃない？」
「ええの。気持ちの問題やから」
「なにそれ」
「テンションが上がるんよ」
「ちよちゃん、意味わかんないよ」
その間にもスマホでレンタル着物を熱心に眺めている。
「あ！ ここのお着物レトロかわいい、ほら！！ ……威尊はこれ似合いそう、あ、こっちもいいかな」
目を輝かせてこちらに同意を求めてくる顔があまりに楽しそうなので、俺も浮き足立ってしまう。
「着物デート、楽しみやね」
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
