ヤマトナデシコ七変化 ページ18
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全員が和装で臨んだ新年用のINIフォルダの撮影が終わるなり、Aちゃんは思いっきり顔を顰めて呟いた。
「……ゔっ……、くるしい」
「大丈夫？ とりあえず楽屋まで戻れそう？」
心なしか顔も青褪めている気がする。俺の言葉の合間にも低く唸っていた。
「まじしんどいんやったら無理せず言って。俺運ぶから」
「いい……」
力無く頭を振っている。今日は女性らしい華やかな着物に合わせ、伸びてきた明るい金の髪を和風に結い上げている。見えているうなじが頼りない細さだ。肩も薄い。
「ごめん、威尊。悪いけどスタイリストさん……っ、それと着付けの先生、っ呼んでくれる？」
「わかった、ちょっと待っとってな」
息苦しそうにしている彼女を残すのは気が引けたが、俺にできるのは急ぐことだけだった。
「たける〜、さっきはありがとね」
俺たちが待つ控え室に戻ってきたAちゃんは私服に着替えて、髪ももう下ろしていた。のんびりとした口調で、顔色も戻りつつある。すとん、とソファの隣に腰を下ろした。軽い衝撃にソファが揺れる。
「もう大丈夫なん？」
ペットボトルの水を渡す。ありがと〜と封を切り、ちびちび飲み始めるのを確認して一安心。
「うん。帯とか補正とか取ってもらったら一気にラク」
「あ、あれ具合悪くなったわけやなくて」
「そう、帯苦しかった。ごめん、説明してなかったっけ？」
「うん。でもええよ、苦しいとそこまで気ィ回らんもん」
「急いで呼んできてくれてほんと助かった……」
そこまで言うと彼女は、ふぅ、と大きく肺の中の空気を出し切るように溜息をついた。
「お着物って大変だよね」
「めっちゃ苦しそうやったもんね」
「補正でバスタオルとか入れてもらったり、いろいろやってもらってて。もうお腹の周りガッチガチだったんだよ。餅つきするから着崩れないように、ってしてくれてたんだけど、息苦しくて暑かった」
「まじかー……あんなに元気よく杵振り回し取ったのに。気づかんかったわ」
「おかげで思いっきり動けたけどね。足もガッと開いてたし」
「餅つきに挑む姿勢が一番男前やったわ」
襷かけられたらその気になっちゃった、ケラケラと笑っている。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
