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「どういうこと？ 俺何も状況わかっとらんのやけど」
「いや、俺もよくわかっとらん。Aちゃんは知り合いっぽいんやけど……」
俺たちがひそひそしていたその間にあらかたの話は終わっていたようで、
「——それじゃあ、お忙しい中失礼しました。またね、Aちゃん」
そう残して、ひら、と手を振って颯爽とかっこいいひとは去っていった。その背中を小さく手を振りながら見送っているAちゃんのところへ集まって、びっくりした！！ かっっっこよかった〜〜……っ！！！ 口々に喋り出して一気に騒がしくなる。
「……お知り合い？」
「うん。子役やってた頃、何度か一緒にお仕事させていただいて。可愛がってもらったんだよねー」
どこからともなく、へぇ〜……と声がする。匠海が言う。
「Aちゃんこの中で一番芸歴長いもんな？」
「ノーカウントです」
「初めは赤ちゃんモデルだったんだっけ？」
「覚えてないけどね」
理人に向かって肩をすくめている。
「も〜、ご挨拶はいいけど先言ってよー。俺びっくりしちゃったわ」
「柾哉くんごめん。でもスマホ持って出なかったから」
「まあ、ちゃんとご挨拶できたし。ええやんキム」
「ありがと、たけちー」
みんなもありがとね、Aちゃんはやわらかく笑んでいる。
「紹介できてうれしかった」
いつもより幼い顔ではにかんでいる。満足、といったその表情に、部屋の中にはほんわかとした空気が流れた。
「……なんかちょっと似てるかも」
「ん？雄大？」
その後のお仕事を無事終わらせ、車に揺られながら隣に座るAちゃんに話しかけると目だけで続きを促された。脳裡に浮かぶ颯爽と立つ大女優の姿は、隣の彼女の立ち姿と似ている。気取りなく華やかで、眩しい。
「なんていうか……かっこよさの質っていうんかな？」
「ええ！ 畏れ多い……、でもそうならめちゃくちゃ嬉しい」
そっか〜、うれしいなー。憧れだし。屈託なくニコニコしている様子はかわいい。でも俺は知っている。Aちゃんがどれだけしなやかでうつくしい在り方の生き物か。俺だけじゃない、今はきっとたくさんの人がそれを知っている。そんな彼女は鮮やかなまでに視線を奪っていくのだけれど、Aちゃん本人はたぶん、ちゃんとは理解していないところがある。
車内で避けれないことをいいことに、俺はAちゃんの方にもたれかかる。
「も〜これ以上かっこよくならんで」
「なんで？」
「まじ胸キュン止まらんから」
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
