君に胸キュン ページ16
.
「ねー、Aちゃん遅くない？」
「言われてみればそうやな……」
お水買いにいってくるね、とAちゃんが俺たちに当てがわれた控え室を出ていってからしばらくして迅が心配そうに呟いた。
「ここあんま来たことない場所だし。迷っちゃってるとか？」
「Aちゃんって別に方向音痴とちゃうやろ」
「そうだけどさ〜……雄大くんは心配じゃないの」
「迅は心配？」
「心配。いつも用事済ませたらサッと帰ってくるタイプじゃん」
「うーん、迷子はないと思うけど。……行く？」
ん、とだけ返事をした時には迅はさっさとドアの前にいた。俺も後ろからついていく。ドアノブに手を伸ばそうとしたのと同時、外から扉が開いた。俺たちはビックリして揃って固まってしまう。
「あ、ごめん。ノックすれば良かったね。どっか行くとこだった？」
「Aちゃん！ 遅いから心配し、た……ぅえ！？」
目の前には今探しに行こうとしたひと。そしてその後ろに見えた人影に驚きすぎて、並んで直立不動になった。テレビで見たことあるひとや！ 背筋が伸びる。『女性が憧れるかっこいい女性』としてドラマも映画もいくつもの主演をしていて、オーラがすごい。光っている。綺麗だけど、それ以上にかっこいい。すごい。
そんな大女優が華やかな笑顔を浮かべてこちらを見ている。なんでここに？ というか、なんでAちゃんと一緒？ 「はじめまして」
涼やかな声で挨拶されて、思わず挙動不審になりながら応える。は、はじめまして……。
「はーい、全員集合〜」
そんな俺ら二人に構わず、Aちゃんは室内に向かって号令をかける。他のメンバーがこちらに視線をやると思いもよらない来訪者の姿を発見した途端みんなピシッ！ と背筋を伸ばしているのを見て逆に少し冷静さを取り戻した。
「こちら、今のわたしの仲間です」
俺たちを示すAちゃんは誇らしげで、満面の笑みを浮かべている。
「……A。俺たちにもご挨拶させて」
いち早く我を取り戻した柾哉くん(さすがリーダー)が切り出すと、せーの、とおなじみの挨拶をする。
「はじめまして、INIと申します」
深々とみんな揃って頭を下げる。顔を上げるとやさしく彼女は目を細めて、ご丁寧にどうも、と微笑んでいる。
「突然押しかけてごめんなさいね」
「いえ。こちらこそご挨拶が遅れてすみません」
西くんやっぱりこういうとこ最年長や……と半ば呆けながらその対応を眺めていると後ろから匠海がつついてきた。ちら、と視線だけ送ると小声で話しかけてきた。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
