ぼくとあのこの苦手について ページ14
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「Aちゃんってさ、苦手なものあるの」
常々思っていた。紅一点という性質上、彼女に求められるものは多い。スキル、ビジュアル、グループの中の立ち位置。オールラウンダーでいることが宿命づけられている。そんなうちの紅一点は俺の不意の質問に絵に描いたようなびっくり顔をしている。
「あるよー。ありまくりだよ。大夢も知ってるでしょ？」
激辛とかー、球技とかー、指折り数えて教えてくれる姿はいつもより幼い。
「うん、それは知ってるよ。Aちゃん球技ほんと苦手だよね」
「ちゃんと知ってるじゃん……」
「だってヘナチョコサーブだったもん」
「男子の中に混ざって女ひとりビビりながらバレーもドッジボールもやったことを評価してほしい」
俺があのかわいい威力のサーブを思い出して笑っている一方、Aちゃんは大真面目な顔をしていた。
「他には？」
「そうねえ……、あとはパートスイッチとか？」
「あれ苦手とかある？」
「あるよ！！」
「おっ、すごい勢い……。でもあれってさ、もう最終的にみんな訳わかんなくなってぐちゃぐちゃになるのが醍醐味でしょ？」
「そうなんだけどさ。どっちかっていうとダンスそのものというより動線確保が怖いのよ」
「あー……そっちね」
「だって誰かとぶつかって吹っ飛ばしちゃうかもしれないじゃない？」
「えっ、そっち！？」
どう考えても誰かにぶつかった時、吹っ飛ばされるのはAちゃんの方だ。体格的にもパワー的にも。それでも彼女は言う。
「そうだよ、みんなでどこ行けばいいかモタモタしてる時にドーン！ ってやっちゃうかもしれないじゃん」
「お言葉ですが。その可能性は大変低いと思われます」
「なんで？」
「大変申し上げにくいのですけど……」
「えーなになに？」
「あのね、吹っ飛ぶ側と吹っ飛ばしちゃう側が逆だと思うんだよね」
Aちゃんを指して『吹っ飛ぶ側』、自分を指して『吹っ飛ばしちゃう側』。それを示しても納得していないようだった。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
