年下のおとこのこ ページ12
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「パフォーマンス前のAちゃんってさ、ものすごい集中しててちょっとだけ怖くない？」
「確かに」
ストレッチをしている最中に大夢に言われて、ちらと彼女の方に目をやると、頬杖をつきペッタリ開脚しながらたけちーと雄大と話し込んでいる。その姿に身体柔らかいなと思う。曰く、子供の頃はもっと柔らかかったとのこと。
いつまでも眺めているわけにはいかない。そろそろ支度に本腰を入れる時間に入った。衣装に着替えてメイクを整えてもらわなければ。立ち上がって、ぐっと背中を伸ばす。無防備になったところ、その脇腹をスゥ〜〜っと人差し指でなぞられて、俺は思わず変な声を出してしまった。犯人はといえば悪びれることなく声を立てて楽しそうにしている。
「も〜、何しとんのAちゃん……」
「んー？ さっき理人こっち見てたから、構ってほしいのかな？ って思って」
「違う違う。……いや構われるのは全然……うん、いいんやけど」
むしろアリなんやけど。ゴニョゴニョ呟きながらニコニコしてる目の前のAちゃんを観察する。リラックスした表情。
「そろそろ支度せんとね」
「そだねー。今日髪どんなしてもらおうかなー」
一つ伸びをすると、Aちゃんはフーッと長く息を吐いた。
「それじゃ、わたし着替えてくる」
「おん。また後で」
扉を出る後ろ姿を眺めながら、次会う時にはたぶんさっき大夢の言ってた『ちょっとだけ怖いAちゃん』なんだろうなと思ったりする。
ヘアメイクと着替えを済ませたAちゃんは、やっぱり『ちょっとだけ怖いAちゃん』だった。普段と変わらないように振る舞っているが、意識を自分の内側に向けるようにして集中を高めている。その様子はストイックで、気迫なのかオーラなのか、いつもの彼女とは違うひとみたいだ。
「……ね？ やっぱりちょっとだけ怖い」
ひそひそと楽しそうに大夢が言う。なんでそんな嬉しそうにしているのか。
「かっこいいよね」
「そうね」
俺には近寄り難く見える。まあ、受ける印象は人それぞれだよなと結論づけた。
——バチン！
パフォーマンス前恒例の、洸人と京ちゃんの気合入れの音。気合い入るけど痛いんだよなと目をやると、Aちゃんが洸人に向けて背中を向けていた。
「ほんとにいいのね？」
「うん。ひろくん、思いっきりお願いします」
細っこい背中を前にして、洸人は困った顔をしている。男相手にやるような力を込めた気合い入れを彼女相手にするのは躊躇うだろう。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
