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「匠海、今日ってもうお仕事終わり？ なんでここにいるの？ いつも送ってもらって帰るでしょ？」
「うん、終わり。帰りの車からAちゃん歩いてるの見えて、降ろしてもらったんよ」
「おつかれさまでした」
「ありがとうございます。……ところでAちゃんは？ お出かけですか？ それ、行ってきたん？」
彼女の手にはネズミのキャラクターで有名なテーマパークの大きなショップバッグがぶら下がっている。
「ううん。あのね、午後から時間が空いたから伯母の家に行ってきて。ちょうど従姉が子供と一緒に来てて、遊んで帰ってきたとこ」
「へぇー。ええなあ。その子、まだちっちゃかったですよね？」
「うん。今年三歳」
「そんなんめちゃくちゃかわええお年頃やん」
「そうなんだよー、何しててもかわいい」
うんうんと頷いている。
「でね、その子がこの前おじいちゃんおばあちゃん……つまりわたしの伯母夫婦と一緒に夢の国行ったんだって。で、おみやげもらったの。Aちゃんにって」
「なに、めっちゃ可愛い」
「自分で選んでくれたんだって」
「ええー、それは可愛いが過ぎるな！」
袋の中から小さなぬいぐるみバッジを二つ取り出して見せてくれた。ちょっと短気でそこがキュートなアヒルとそのガールフレンド。
「Aちゃん好きやったよね」
「うん。身内ながらおみやげ選びのセンスがある」
普段使いのリュックにつけようかなー、目を細めて笑っているAちゃんは赤く染まってゆく太陽に照らされてとても優しい顔をしている。茶色い瞳に陽の光が入ってキラキラしていた。
「……まぶし」
「この時間の太陽、結構目にクるよね」
俺の小さな呟きを拾って、また笑っている。そやね、と応えつつ、俺は内心で胸を撫で下ろしていた。思わず漏れた呟きの真意を彼女がわかっていないこと。それに安堵する。当然Aちゃんはそんな俺の焦りなど知らないので、のんびりとした口調で言う。
「行きたいなー、夢の国」
「え」
「みんなで」
二人でなんて言われるのをちょっとだけ期待してた自分に気付いて胸中で苦笑した。
太陽は暮れていく。並ぶ影が長く長く伸びている。
「明日、みんなに提案してみましょっか。二人で」
「うん。するするー」
もうすぐ家に着く。この時間が終わるのが名残惜しい。そう思う心を瞬き一つで払い、俺はAちゃんに笑いかける。
「たぶん、全員行くって言うで」
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
