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*続き(完) ページ39

さちお。様リクエスト 朝田side
『朝田くんの乗り物酔い』

相手校で一番仲の良い同級生に俺が投じた疑問。
__修学旅行ってさ、行って来てどうやった?
一瞬だけ目を丸くされた。そんなこと聞くんだ、とでも言う風に。いくら俺でも気にしてるのに。

「ふーん…別に同じ時間やったけどなぁ」
「えっ?」
「終わってみたら普通に過ぎた数日と一緒やで。だから淳弥くんが過ごす時間とも、きっとそう」

確かに頷ける話だった。その時間の予定が事前に決まっているかいないかだけで、訪れてもいない瞬間の価値が決まってしまっては不公平過ぎる。
はっと胸を突かれて、同時に心は安らいでいた。

「来てくれてホンマありがとう!」
「うん、ばいばい!」

名残惜しくも思いながら終了した今回の交流会。
学校を後にして、行き掛けと同じ路線バスに乗り込み適当な座席から窓の外を眺めていると何だか妙な感覚がしてくる。頭が回って気持ち悪くて…

(これ絶対酔ってる、ヤバいかな…?)

経験で直感した事実に思わず目をぎゅっと瞑る。
恐らくバスが駅に着くまでは後10分ほど掛かる、下級生どころか一般の人も大勢いる状況において最悪の展開だけは避けたい。周りに怪しまれないよう最小限の深呼吸を繰り返して少しでも治まるよう祈った。幸いまだ目眩はしていなかった。

「はぁっ、はぁ…」
「淳くん?大丈夫?」
「くっ…はぁっ、っ!」
「え、淳くん!」

バスを降りてから数歩、もう限界は直ぐそこで。
どうにも出来なくなって反射的に集団を抜け出し駅のトイレへ駆け込んで胃の中のものを吐いた。
乗り物酔いって消化器の不調でも何でもないから出てくるものは水分だけでも吐けばスッキリする訳じゃなくて、ただただ気持ち悪さに襲われる。

「淳弥?しんどかったな、俺おるから」

後から来た真鳥先生が開けっ放しだった扉を閉めつつ、そう言って背中を擦ってくれた。やっぱり体調が悪い時はこういう温もりとか心に染みる。
暫くしてベンチに移動すると皆はもう帰った後。

「真鳥先生」
「ん?どうした?」
「いま、それなりに、結構しんどいけど…」
「うん」
「…今日、来て良かった」

本心だった。後悔なんて何一つ無い自分がいた。
さっきまで乗り物酔いに苦しんでたことを何とも思わない訳じゃないけど、少なくとも今日1日を振り返れば他の色んな思い出の方が大きかった。
すぅ、と吹いた風が頭を撫でて冷ましてくれる。
何とか落ち着いた頃に真鳥先生と家まで帰った。

作者より→←*朝田くんの乗り物酔い



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y - MOON NIGHTさん» こちらこそ完結までお読み下さいまして誠にありがとうございました。読者様に支えて頂いた部分は凄く大きかったですし、ほっと心が温まるようなお話を通して私の伝えたかったことや自分の心そのものを整理できたので良かったと思います。長らく御世話になりました。 (2018年1月24日 14時) (レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)
MOON NIGHT(プロフ) - 完結お疲れ様です。ステキなお話ありがとうございました。作者様の書く文章が大好きです。何か、こう、温かさを感じていました。本当に素晴らしいお話をありがとうございます。 (2018年1月23日 23時) (レス) id: 38dd7cb8aa (このIDを非表示/違反報告)
y - MOON NIGHTさん» こちらこそリクエストして頂きまして誠にありがとうございました。色々なお褒めの言葉、嬉しい限りです。これからも本作品をよろしくお願い致します。 (2017年11月14日 7時) (レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)
MOON NIGHT(プロフ) - リクエストお応えいただいてありがとうございました!やはり作者様の書かれる文章がとても好きだなあと改めて感じました。心情表現というか人との関わりの表現だったりストーリーそのものが大好きです。続きのお話も楽しみにしております。 (2017年11月13日 18時) (レス) id: 38dd7cb8aa (このIDを非表示/違反報告)
y - さちお。さん» 2度目のコメント&リクエストありがとうございます。朝田くんは毎年校外学習に行っていない設定なので特支教室メンバーでの学校訪問だったり見学などといった形になると思います。他に細かい希望があれば後からでもコメントして下さい。 (2017年10月28日 8時) (レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:y | 作成日時:2017年8月20日 12時

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