それは末澤くんなりのSOS ページ29
Original story 古謝side
『それは末澤くんなりのSOS』
季節の変わり目に差し掛かって箪笥の奥から薄い羽織りものを引っ張り出すことが増えたこの頃。
まだ昼間は半袖が丁度良いな、と思う休み時間に突然あいつがやって来てこんなことを頼まれた。
「古謝ぁ…」
「末澤？どうしたん」
「あんさあ…それ、上着…貸してくれへん？」
窓際の少し離れた座席で、末澤がいることと俺に向かって話し掛けていることだけ認識して喋ってたから、一瞬どういうことかと軽く面食らう。
分かったのは普段よりも格段に弱々しい声だけ。
取り敢えず背凭れに掛けていた自分のパーカーを手に取って丸め、ドアの前から渡してやる。と、
パーカーは末澤の手から滑り落ちてしまった。
「あ、ごめ」
「ああ…てかどうしたん？寒いん？」
「分からん、けど…さっきから震えるねん…」
さっと拾い上げて明らかにおかしい末澤を見る。
よく見たら力もろくに入らへんのとちゃうかっていうくらいに末澤の右手はガタガタ震えていて。
もう片方の手も体を抱え込みながら寒さに耐えるように爪を立てて、指先と二の腕はほぼ真っ白。
かと思えば呼吸もどんどん荒くなってきてる。
「っはあ、はあ…やっ…」
「末澤ほんまに、ってお前…！」
兎にも角にも見ていられなくて、取り敢えず袖は通さないでパーカーを肩へ回してやっていると、突然その体が傾いたから慌てて肩を引き寄せた。
同時に腕が触れて、＿＿こいつ、異常に冷たい。
おでこや首筋に手を当てても同じくらいに感じるその温度、熱があるとかの話とは違うと悟った。
「そっか…今日そんなに教室寒かった？」
「いや、晴れてるから暖かいくらいです」
大急ぎで肩を支えて夢主先生の元へ駆け込んだ。
朝から寒いと思ってたら上着を持って来る筈やし何なら今日は教室に来た方が温まるくらいやろ。
なのに末澤の体温は35.4度という低すぎる値で。
俺には何が起こってるのか理解できないけれど、夢主先生はほんの少しも表情には出さなかった。
「ごめんな長いこと、教室戻る前に職員室行って真鳥先生呼んでくれる？この時間は居てるから」
「…分かりました」
それから言われた通りに職員室へ行って、末澤が低体温で保健室にいることを真鳥先生に話した。
先生も、後は大丈夫やからな？と言って微笑んでぽんとスイッチを入れるみたいに歩き出してく。
あーやっぱ苦手やなあ、人に気を遣われるのは。
自分が気遣う分には得意分野やのにな、なんて。
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y - MOON NIGHTさん» こちらこそ完結までお読み下さいまして誠にありがとうございました。読者様に支えて頂いた部分は凄く大きかったですし、ほっと心が温まるようなお話を通して私の伝えたかったことや自分の心そのものを整理できたので良かったと思います。長らく御世話になりました。 (2018年1月24日 14時) (
レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)
MOON NIGHT(プロフ) - 完結お疲れ様です。ステキなお話ありがとうございました。作者様の書く文章が大好きです。何か、こう、温かさを感じていました。本当に素晴らしいお話をありがとうございます。 (2018年1月23日 23時) (レス) id: 38dd7cb8aa (このIDを非表示/違反報告)
y - MOON NIGHTさん» こちらこそリクエストして頂きまして誠にありがとうございました。色々なお褒めの言葉、嬉しい限りです。これからも本作品をよろしくお願い致します。 (2017年11月14日 7時) (レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)
MOON NIGHT(プロフ) - リクエストお応えいただいてありがとうございました！やはり作者様の書かれる文章がとても好きだなあと改めて感じました。心情表現というか人との関わりの表現だったりストーリーそのものが大好きです。続きのお話も楽しみにしております。 (2017年11月13日 18時) (レス) id: 38dd7cb8aa (このIDを非表示/違反報告)
y - さちお。さん» ２度目のコメント＆リクエストありがとうございます。朝田くんは毎年校外学習に行っていない設定なので特支教室メンバーでの学校訪問だったり見学などといった形になると思います。他に細かい希望があれば後からでもコメントして下さい。 (2017年10月28日 8時) (レス) id: cd7f25b263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：y | 作成日時：2017年8月20日 12時
