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『圭人はもういない。』
…違う。
心に刺さった言葉を引き抜いて捨てる。
『…いないんだ。』
違う、お前は生きてる。
いくら抜いても、あいつが吐いた言葉はまた俺の心臓を突き刺した。
『分かってよ、山ちゃん。』
涼介「分かってたまるか!」
誤魔化せると思ったか?
メンバーの顔して言えば、受け入れるとでも思ったか?
なあ……圭人。
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俺は走った。夏の夜に唸る砂浜を、海風に冷えたコンクリートを。
でも、どんなに走っても、身体を焼き尽くす炎は消えなかった。
足がもつれる。
転げそうになった勢いで、身体は防波堤に打ち付けられた。
乱れた息。ズルズルと力なく岩を擦った身体は正直に酸素を欲しがる。炎をさらに燃え上がらせるように。
四つん這いになっても胸の真ん中が苦しくて、襟を掴み仰向けに倒れた。
鼻を突く潮のにおい。はあ、はあ、と荒い息遣い。ドクドク、と苦い心臓の音。
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夜空で、ぼやけた星がひとつ、瞬いた。
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防波堤の上。
夜風が優しく撫でると、頬を濡らす涙が冷えた。
三角座りのまま、乱暴に拭い顔を伏せる。まぶたの裏に、くっきりと赤い火の粉が映った。
真紅の羽が、ざわざわと揺れる。
助け出そうとして蔦の中へ飛び込んだはずなのに、圭人のいない世界で、俺は見えないあいつと対峙している。
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『最期の別れ』とでもいわんばかりに。
冷やされていく頭に、ふと過った言葉。
自分で自分に嫌気がさして、抱えた腕にギュッと爪を食い込ませた。
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トン、
と何かが背中に当たったのは、ちょうどその時だった。
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声も温度も感じない。
けど、気配だけははっきりと感じ取れた。
心臓が、トクン、と跳ねた。
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涼介「…お前さ、何でこんなことしてんだよ」
想像以上に弱々しい声が、波の音に紛れて消える。
背中合わせのまま、答えは返ってこない。
二人の間を、風が通り過ぎていった。
涼介「何とか言えよ。
聞こえてんだろ…圭人。」
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名前を呼んだ瞬間。
合わせた背中が、ぴく、と動いた。
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NMダイキング担 - 続き楽しみです!!!圭人君は大丈夫なのか……ドキドキです♭ (2019年10月17日 17時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!みんなで元の世界に戻れるのか…ワクワクですo(^o^)o (2019年10月6日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - NMダイキング担さん» いつもありがとうございます!励みになります。またいつ更新が止まるかも分かりませんが、絶対最後まで書ききりますので、どうぞよろしくお願いします。 (2019年9月10日 23時) (レス) id: a8713bcbc6 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 続き楽しみです!!!この小説の世界観が大好きです! (2019年9月10日 22時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ | 作成日時:2019年9月3日 23時