ライブハウスと彼の声 (ページ9)

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第七話.強い眼差しを携えてページ9

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ガラガラの会場、女の子がちらほら。
隣にはサウスポーのマスターであるマサさんがいた。

今日は店の手伝いを休んで彼らの演奏を聴きに来ている。
マサさんも仕事を休んでここに来たらしい。
どさくさに紛れて女の子の尻を触れるとか何とか言っていたけど、まさかやらないよな？

ライブに来たのだが、あまりにも人が少なすぎて一瞬ライブに来たことを忘れてしまう。

「本当ガラガラだな…」

周りを見回しながらマサさんが呟く。

A「こんなに可愛い始ちゃんが居るのに、世の中の人々は一体何してるんだって思いますよねマサさん」

「ごめんちょっと何言ってるか分かんねえな」

ダイダラボッチのライブは個人的にはとても好きだ。
特に始が。
始を推して参りたい。

ただ周りの評価はイマイチで、パッとしないとか、普通とかそんな話をよく聞く。
いわゆる売れないバンドという感じのバンド。
それが現在のダイダラだった。

演奏が終わった後はヘブンズドア。
だがその名はもうすぐ変わるらしい。
クリムゾンスカイに所属が決まったとか…

噂によると、改名したと同時にプロデューサーが就くとの事。
残念ながら自分が知っているのはここまでだ。

店の手伝いでバーカウンターに立っていると色々な人に出会う。
以前より増して彼らの名前はその際によく耳にするようになっていた。

ダイダラの演奏が終わる。
ぱらぱらとした拍手と声援…主にAとマサさんの声援だが、今日もそんな感じで彼らの出番は終わった。

次に舞台へ上がるのはヘブンズドア。続々とお客さんが転がり込んであっという間に満員になる。
噂に聞いていた通りの人気だ。

声援と共に出てきたのはヘブンズドア時代から変わらぬメンバーと翔平。

隣にいた応援うちわを持っている女の子ファン達が黄色い声援をあげた。
それを目にすると何となくもやもやとした感情を覚え、直ぐに視線をステージに戻す。

以前のビジュアル系よりややすっきりした姿で現れた彼は、前より増して強い眼差しを携えていた。

「お前ら！いくぞ！！」

脳天を突き上げるような彼の力強い声がAの体を突き抜ける。

逞しさと優しさ、想いの込められた歌声が観客を魅了していった。