第九話.カレー嫌いな人なんている？ ページ12
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A「え？…っええー！？始ちゃんがボーカルに！？」
サウスポーのカレーを貪っていた手が思わず止まる。
A「だってこの前うちに来た時、ボーカル探してるって言ってたけど！？」
「それがな、色々あったんだよ。闇金の事務所に乗り込んでったり、叶姉妹の猫を探したり」
A「えﾞ！？待って。待って、闇金？叶姉妹？？ボーカルになった経緯と関係無くね！？」
「関係無くねえよ。その事があって始のルーツに触れたっていう…」
今日もダルッダルッのシャツを着たマサさんが何やら説明してくれているが、聞いてても分からないので途中で右から左へ言葉が流れていった。
もうこれは後で本人から聞いたほうが早いだろう…
「まあ、そんなこんながあって今は始がボーカルだな」
A「ふーん…。ヘブンズドアもDICに変わったし、なんだか両バンドとも変化の時なんだね」
両者とも大きく変わった。
ここからどう進むのかは未知数だが、本質が変わらないのならそれで良い。
そう思いつつカレーを口に運ぶ。
始たちがよく練習をしている部屋は今は静まり返っている。つい先程までここに居たらしい。
見事に入れ違ってしまったので、こうしてマサさんのカレーを食べているところだ。
カレーってすごいよな。
カレー嫌いな人なんている？
A「ゴチになりましたっ。マサさんお会計ー」
お手手のシワとシワを合わせて行儀よくゴチる。
「おう、今日のカレー代はいいから」
マサさんが笑みを浮かべて親指を立てた。
何て気前が良いのだ！明日は雨だな！
A「マジで！？マサさん大好き！男前っ！」
「その代わりこれ。はい」
A「ん？」
流れるようにエプロンを手渡させる。
強制的に手伝いが決定した。
A「マサさんきらい…」
めちゃくちゃに低いテンションでそう呟くと、マサさんの笑い声が聞こえてきた。
A「くっそー…大掃除の手伝いさせられた…」
すっかり日が暮れてしまった。
カレー代以上に働かされた気がする。
「A？」
ふと、声が聞こえて顔を上げた。
暗い夜道でもはっきりと分かる端正な顔立ちとすらりとした体型。
A「あれっ…翔平？」
しばらくぶりに出会えた彼。
手伝いをした甲斐があった。
カレーのお陰だなこれは。
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作者名：香坂プロダクション | 作成日時：2018年4月25日 13時
