星屑ビーナス

002 ページ2

.









「あの、もうすぐ、タクシー来ますんで」





「ん、」






返ってきた短い返事



何とか意識はあるみたいでホッとした



もし、陣さんみたいに酔い潰れてたら



どうにもできないもん



暫くしたらタクシーが来て2人で乗り込んだ






「っ、」






窓の外を眺めてると肩に感じる重み



寮に着くまでのたったの5分間がこんなにも



長く感じたのは直ぐ側で聞こえる寝息のせい







「ほ、北人さん、着きましたよ」





「んー、」







寝ぼけてるのか、目を瞑ったままの北人さん



どうしようか迷った挙句、北人さんを抱えて外へ








「歩けます？」





「む、り」







喋れてるのに、






「よいしょっ、お邪魔…します、」






陸さんが開けてくれてたのか鍵は閉まってなくて



廊下を進んで行くと他のメンバーはもう寝たのか



広間には誰もいない






「部屋どこ、っ」








寄りかかる北人さんを支え直した時








「…こっち」






そう耳元で囁く北人さんの声を聞いたのと



腕を引っ張られたのは同時で



今、私の目の前に広がってるのは



いつもとは違う北人さんの顔と真っ白な天井







「嫌なら突き飛ばして」







射抜くような視線に身体が熱くなる



私が拒めないのわかってるくせに



北人さんは本当に、ズルい









.

003→←001

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す