【小説】 colosseum -β- 【募/集/企/画】 (ページ2)

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◆ 序章【溜息を零した】ページ2

この状況、誘拐、拉致、どちらもこの言葉にあてはまるだろう。とある施設で目が覚めた天音紅羽(あまねくれは)は目が覚めた部屋で悶々としていた。なぜ天音紅羽が誘拐されたのか、そしてこの部屋の謎。まるでカプセルホテルのような小さな寝床の手前にはテーブルや椅子などの家具やシャワールーム。なんのためにあるのか。そしてこの部屋は二人部屋となっている。そう、つまり、もう一人この部屋にいるのだ。どう考えてももう一人の部屋ではないことは明らかだった。だからこそ更に悩んでいる。このまま彼女を起こすか、それとも目が覚めるまで待つか。かれこれ十分は悩んでいる。

「でもめんどくさいしねぇ……」

　そう呟きながら、流し目ですやすやと呑気に眠る女の子を見る。と、同時にその女の子と目が合った。今の発言を聞かれていたか、と思い警戒する。

「ねえ、ここどこ？」

　しかし、無駄なことだったみたいだ。内心、安心しつつも、天音紅羽は自分もここのことは知らないということを告げた。それを聞くと、女の子はベッドから起き上がった。

「私は蜘蛛川巴(くもがわともえ)って言うの。名前教えて！」

　"こんな状況なのに呑気だなぁ"と半ば呆れつつ、天音紅羽は自分の名を口にした。

「天音紅羽、っていうの。よろしくね」

　そういうとニコニコと笑いながら話を続けてくる女の子、基蜘蛛川巴に話を合わせるかのように天音紅羽は微笑み返しているが、本心ではない。純粋無垢な蜘蛛川巴との会話をさっさと切り上げたいと思っているのが本音だ。こんな子、見ているだけで吐き気がしてくる、という思いをぐっと押し留めて会話を続ける。すると、天音紅羽の思いが天に届いたのかはわからないが、無機質な声が部屋の中に響き渡った。

「皆サマ、おはようございます。ご気分のほどはいかがでしょうか」

　女性の声であることはすぐにわかった。そして、声を変えていないことも。

「皆サマがご起床なさいました。今から名前をお呼びいたしますので、呼ばれた方は部屋を出たら二階の方は階段を使って宿から本館の二階にあります"管理室"へお越しください。それでは、一番は天音紅羽様。お待ちしております」

　勘ではあるが"面白そう"と彼女は思った。表情をいっさい変えず、蜘蛛川巴に別れを告げ部屋をでると急ぎ足で管理室へ向かう。

　彼女はドア前に着いた。知らない場所にいきなり集められてこれから何が起きるのか。ワクワクしながら、管理室のドアを開けた。