Colorful Magic ４

６ ページ29

お父さんは、
定位置である、
暖炉の前のソファに座って、
経済誌を読んでた。


なんて言おうか、
ずっとシュミレーションしてきてん。

それやのに、


「お父さん、
明けましておめでとうございます。
あのさ・・・えっと、その」


頭真っ白んなって、
言葉に詰まってしもたけど・・・


「すぐに弱音吐いて帰ってくる思たら、
なかなか根性あるんやな、
さすがの俺の息子や」


お父さんの方から、
思ってもない言葉が返ってきた。


「え・・・？」


「智洋、
自分が納得するまで思う存分やってみろ。
成功するまで帰って来んな、言いたいけど、
それも寂しいしな。
たまには顔見せに来て欲しい」


「お父さん、あの・・・
約束破ってごめんなさい。
留学までさせてもろたのに、
家も継がずに・・・」


「もうええ。
後継は志桜里に任せるから。
智洋は夢に生きたらええ。
その代わり、
自分の責任で生きていけるな？
失敗しても泣きついてくるんちゃうで？」


胸も目の奥も熱くて、
お父さんの顔、まともに見られへん。


「はい。
ありがとう。
お父さん、ほんまにありがとう」


何とかお礼だけは声に出来た。


ふっと気付いてんけど。

お父さんが見てんの、
表紙は経済誌やねんけど、

よう見たら、
中は、俺の出てる音楽雑誌やねん。


秋に、
有名アーティストのバックダンサーに、
日本人がおるって、
日本の雑誌社の人が、
アメリカまで取材に来てくれてん。

あの時の、先週発売になったやつや。


「おじさん、お久しぶりです。
明けましておめでとうございます。
お邪魔してます」


俺の隣で、
その様子見守っててくれた淳太。

ようやく挨拶。


「おめでとう。
こちらこそ、よろしくな。
ゆっくりしてって。
淳太くん、
この雑誌、送ってくれてありがとうな」


お父さんがそう答えて、びっくりした。


「いえ。
お節介して、すいません」


淳太は、ピンチの時はいつも助けてくれる。

頼れる、俺のお兄ちゃん。


「淳太、ありがとう」


「俺は何も。
智洋の頑張りが認めてもらえたんや」


そんで、お父さんに、

せっかくやから、
お節料理食べて行き言われて。

７→←５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す