palette【オリジナル合作】 (ページ10)

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しばらく走り回って疲れてきた頃、さすがにAも疲れてきたようで、近くにあった一本の木の下で足を止めた。

「つかまえた！」

今度は僕が後ろからAを抱きしめる。
上品な香水の香りが僕の鼻を掠めていく。
彼女は、つかまっちゃった～と静かに笑った。

抱きしめた手を緩めれば、Aは木にもたれかかるようにして腰を下ろす。
僕も同じように隣に座った。

『久々にはしゃいじゃったね』

晴れ渡る空を見上げながら、Aがそう言った。

「子どもの頃を思い出すよな」

『そうね』

爽やかな風が2人の間を通り抜ける。
こんなにゆったりとした時間を二人で過ごすのは久々だ。
僕は自然と、昔二人で過ごした日々を思い出していた。
仲良く並んで学校まで歩いたこと、初めて喧嘩をしたときのこと、花火を隣で見たこと――
全部綺麗に僕の中に残っていた。いつも僕のそばにはAがいた。

不意に肩に重みを感じて目を向けると、Aが僕に身を預けて静かに寝息を立てていた。
つやつやとした亜麻色の髪が風にさらわれて僕の肌をくすぐる。

僕の心はもう随分と前からこの亜麻色に色づいていた。
Aの色である、この色に――。

一緒にいればいるほど、ますます僕は亜麻色に染められてゆく。
もう、ほかの色が入り込む余地などない。

僕は、隣で眠っている彼女の髪を少しすくい上げると、そっと口づけを落とした。

「夢の中でも、君に逢いたいと願ってしまうなんてね」

少し自嘲に似た笑みを浮かべながら、Aに寄り添うようにして瞼(まぶた)を閉じる。

夏の日差しが、2人を照らすように降り注いでいた。

亜麻色に色づいて

―完―

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