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事実は小説より奇なりとはよく言うが、全く持ってそう思う。
血のように鮮やかな髪とは違って、温かみのある桜色のリップで引かれた唇がようやく言葉を紡ぐために、動き出した。
「キミはこの家の家主かい？」
「は、はひ」
投げかけられた問いに、思いのほか声がひっくり返ってしまった。緊張で重みのあるビニール袋に、段々手が疲れてくるのさえ気づかない。その鋭い眼光には、怖いもの知らずである少女でさえも臆してしまうだろう。
「私は、この家の、家主です」
震えた声のままもう一度確かめるように紡いだそれを聞いて、彼は、何かを考えるように人差し指を丸い顎の上に軽く乗せた。
やがて肺いっぱいの空気を吐き出して目を瞑る。呆れたようだった。その動作、毎日耳にした声、整った表情や自然な髪は到底コスプレでは再現出来るものではない。夢小説をよく読む私は、これはいわゆる逆トリップというやつだろうと困惑する頭の中で目星をつけた。
「転移先の座標が噛み合わなかったとか…いや、そんな前例なんて…」
リドル・ローズハートが突然胸元に手のひらを突っ込んで取り出したのは、紛うことなきマジカルペンであった。私のことなど見えていないかのように無視して一振する。
高級感のある万年筆には美しいハーツラビュルの宝石が嵌っていて、左右対称の細やかな装飾が施されている。偽物だと言うには、あまりにも美麗すぎていた。ますます信憑性が上がって、一体なんの魔法を使うのだろうかとほんの少し喜色混じりに見つめていると、彼はこちらを一瞥して、大きなため息をつく。
「…ボクは出ていくよ。事情が事情でも、女の子の家に無断で上がり込んでしまってすまなかった。──…全く、魔法が使えないなんてどういうことなんだ」
最後に苛立ちを含んだ声色でぽつりと小さく呟く。あまり聞き取れなかったので一度尋ねようとしたのだが、ピリリとした空気を纏って胸元のポケットへとペンを戻したのを目にし、開きかけた口を噤む。
推しが目の前にいるのに逃していいのか？とか、なんだこのオバサンなんて気持ち悪がられるんじゃないか、とか色々頭を巡ったんだけど。
私の横を通り過ぎた瞬間、目も眩むような薔薇の匂いと共に、困り果てたような悲しげな表情が彼の顔に浮かんだから。
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Collet(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます！^^飯テロ小説初めてなので美味しいと思っていただけているのならとっても嬉しいです〜！わたしも国宝級イケメンと住みたいんですけどそんな世界線どこかにありませんかね…。 (2020年9月27日 17時) (
レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
いろは - もんのすごい食レポ上手いっすね...お腹すいてきました()リドルくんと住みたいぃぃぃい (2020年9月27日 16時) (レス) id: 783a9cd7e8 (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - まめさん» キレ気味笑いました！ありがとうございます！頭の中で喋っているリドルくんを書き起こしているだけの状態なので、私の解釈しかこもってないんですよ…。理想通りで嬉しいです！^^ 次回更新で続編に移るので、そちらもぜひ読んでください。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - 可愛いなぁもう！！！（キレ）めっちゃ理想どうりのリドルくんで感動してます！大好きです！更新がんばってください。応援してます！ (2020年8月19日 19時) (レス) id: 9861be23cf (このIDを非表示/違反報告)
Collet(プロフ) - やなさん» ありがとうございます……ありがとうございます…リドル・ローズハートをどれだけ可愛らしく見せられるかチャレンジやってるので……"毎回楽しみにしている"とのコメントも、とっても嬉しかったです！書く気が起きました。よかったらまたコメントしてくださいね。 (2020年8月13日 2時) (レス) id: 0bc2fe8691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Collet | 作成日時：2020年6月21日 10時
