【d!】殺人鬼、脅威を拾う。 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:25,453 hit

2 ページ4

布でできた入り口を通り、部屋に入る。

「…軽いなぁ、こいつ」

死体運ぶより全然楽で、思わずびっくりした。
子供って、こんな軽いもんだったかな。…まあ死体大人だけど。

「う…ぅ？あ。ん？」

知らない場所に興味を示したのか、ダンボールから出ようとしている。
…出れてないけど。
嘘でしょ。力も無いのかよ。…禄な教育されてないな。教えてもらったの謝り方だけじゃねーか。
出れなくて面白くないのか、今度はやさぐれ始めた。

「ず、随分感情豊かだな…
ほい」

子供を持ち、ダンボールの外に出す。
水に浸してある服と、替えのナイフと銃と、床代わりに引いた布切れ。
岩と岩の間にそこの辺のゴミで作った家は、随分ボロい。あんま騒がれると困る。

ナイフに興味を示したのか、ハイハイでそこまで辿り着こうとしている。

「…は、ハイハイ…じゃねぇわ。
ちょ、ナイフには触んなよ。怪我するぞ」

子供を持ち上げ、自分の太腿に乗っける。
…手、同じくらいだな。
背は小さい癖に。
私の首くらいまでであろう身長と、同じくらいの手の大きさ。
…年上は、流石に無いだろうけど。大分歳近いな…近いのに、ハイハイ…

「…なぁ、お前何て名前？
って喋らんないよな…ごめん」
「…べつに、しゃべれる」
「うわ喋った！？」

思っていたより流暢に喋り出した少年。なんだよ、喋れるのかよ…

「おれ、しゃべったら、かあさんよろこぶ」
「…そうかよ」
「かまって、いったら、なぐられる」
「そっか」

ぽつりぽつりと喋り出したこいつの人生。人として生きてるか知らねぇけど。

「おれ、できそこない」
「ふーん。名前ってある？」
「…？おれ、のなまえ？
かあさんは、おれのこと…」

それっきり喋らなくなったこいつ。
だから私、子供にどう接したら良いかわかんねぇんだって。

「べんきょう、して。うまくできたらぞむ、ってよんで、くれる。
でも、かあさん普段、おれを『できそこない』って呼ぶ」
「ふーん。ならゾムが名前だろうな。
じゃ、お前はゾムだ」
「…そうなの？」
「そうだよ」

なんだ、そんなこともわかんねぇのか。
ハイハイだったし、歩いたことあるのか？

「おれ、ぞむ…」

気に入ったのか、ぞむ、ぞむと舌っ足らずに口に出す。
毒親でも親だからな。…新しい名前つけてやりたいけど、思いつかねぇし。

「ぞむ…えへへ」
「あ、私の名前は…えっと、A」

危ねぇ。普段言わないし考えないから忘れかけてた。