【d!】殺人鬼、脅威を拾う。 (ページ14)

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ゾムのこれまでを聞いた。

ボンベ家の次男(兄が居たらしい)として生まれたゾムは、兄より優秀だった。
読み書きを覚えるのも早かったし、毒の種類を覚えるのも早かった。
でもゾムは、人を殺せなかった。死体処理を命じられても、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
兄は才能に恵まれなかったが、努力を沢山した。勿論ゾムも努力していたが、その倍は努力した。
兄は殺人に長けていた。
そんな凸凹な2人で、なんだかんだ上手くいっていた。
そこに生まれたのが、ゾムの弟だ。
すくすくと育ち、弟は全ての才能に恵まれた。
兄とゾムを足しても、弟の方が優秀だと言われるくらいに。
それに腹を立てた兄は、弟に暴力を振るった。
頭の良い弟はそれを良い事に、兄を自分の家から追い出した。
人を殺してもなんら表情を変えず、拷問までこなせる弟だったから、きっとそれを悪いことだとは思わなかった。
後継は弟に決定したかと思われたが、そこでゾムに、軍へ引き抜くことが書かれた紙が届いた。
つまりそれは国に認められる技術を持っていることも同然で、弟はゾムを酷く憎んだ。
実際、弟の方が優秀なのだからそれは当然だろう。
そこで弟は、ゾムを家から追い出すことにした。
無い罪を押し付けたが、軍に引き抜かれるのだから家から追い出されることは無かった。
そこで弟は、その赤紙が何かの間違いだと説得し始めた。
明らかに弟の方が優秀なのに、どうして弟にその紙が届かなかったのか。
それはゾムが書き換えたからだと。
酷い言い訳だが、父母はそれを信じた。証拠も無いのに信じ、一家の恥だと追い出された。
…というところまで。
予想以上に酷い有様にびっくりした。

「阿呆やろ？実際優秀なんは弟やし、今もなんかの手違いやないんかと疑っとるけど…」
「随分と不思議なこともあるもんだな」

名門家でも、中級貴族。
父母は素晴らしい暗殺者と聞いていたが、身内には甘いらしい。
いや、時期当主である弟がゾムを追い出そうとしているなど気づかなかったのだろう。
証拠は無いが、筋は通っている論を父母は信じたに過ぎないのか。
…いや、そんな書き換えたりしても軍に来たら追い返されるだけだろ。普通に。馬鹿じゃん。

「…まだ来んのかな」

ゾムがそう呟いた瞬間、ドアがノックされた。