夜桜@Fuji and Kiyo ページ23
*
「キヨ君…また、来たの?」
「何。来ちゃ悪い?」
ううん、と小さく首を振ると、綺麗な桜色の簪が微小な音を立てた。
満開の桜並木。通りを少し外れた所にある小高い丘の頂上には例年通り樹齢数百年の大木の桜が花を咲かせていた。暗闇の中、ぼんやりと浮かぶ桃色。それは今にも散りそうなほど満開であった。
今日もAは佇んでいる。以前と何ら変わらぬ場所で。変わらぬ姿で。
ライトアップされた桜を照らす照明が共に彼女も照らし、肌をぼんやりと青白く染め上げていた。
「会えて嬉しいよ、勿論。最近は皆と話せないから…」
老若男女問わず好かれるその優しい性格も、不快感を与える事の無い喋り口調も、上を見上げている綺麗な横顔も、彼女は決して敵を作らない人だった。
そう、“だった”。過去形の言葉の意味が示す事実。
ーーー今やAは皆の嫌われ者
そういう事だった。
皆が皆、彼女を無視をする。まるで意図的に逸らすように避け、目さえも合わせようとしないのだ。
「っ、キヨ…!」
それは走って駆け寄ってきたコイツも同じ。
Aはフジの姿を見つけると、大きく瞳を揺らし、心底愛おしそうに名前を呼んだ。
そんな切なそうな表情を浮かべるAには見向きもせず、彼はまっすぐ俺だけを見つめた。
「帰ろ?」
なんで___…
「皆キヨのこと探してたよ」
なんで…、
俺の腕を掴んだフジの手を振り払うと、彼は大きく目を見開いた。
「なぁ、なんでだよ」
「…、キヨ?」
ーーーどうして、Aの方を見ようともしないんだ
全ての感情が塊となって飛び出したその言葉は、自身が思っているよりも遥かに大きく響いた。
ざわり、桜の木々が風で大きく揺れる。
フジはただただ唇を噛み締め、下をむいていた。
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海猫(プロフ) - 初めまして。貴方様の作品を見て素晴らしいと思いました。応援してます! (2015年6月27日 13時) (レス) id: 616e7fc4a1 (このIDを非表示/違反報告)
− - 自演乙 (2015年6月25日 21時) (レス) id: 3f2e93888c (このIDを非表示/違反報告)
ミネラリン様LOVE - はじめましてミネラリン様の信者です(真顔)←←ミネラリン様14とか待ち遠しいwwwあ、更新頑張ってくださs((殴☆何様☆ (2015年6月23日 22時) (レス) id: 82e983d564 (このIDを非表示/違反報告)
春雨パスタ(プロフ) - コラボ20人なんて凄い発想しましたね!(・v・)更新頑張って下さい!応援してます! (2015年6月22日 18時) (レス) id: 4c276c06bb (このIDを非表示/違反報告)
黒餓鬼 - はじめまして!ミネラリンさんにつられて来たのですがプロローグも含め3話とも面白くて、更新が待ち遠しいです!皆さん頑張ってください、応援しています(*^-^*) (2015年6月21日 12時) (レス) id: db053f7aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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