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「……そう」
二杯目のコーヒーを口にしながら、彼の向こうで彼女は頷いた。
「なんだか甘酸っぱいお話ね」
「……別に」
甘酸っぱくなどない。むしろ、苦い話だ。苦すぎて顔を歪めて、吐き出してしまうほど。
「ねえ」
「はい？ 」
「貴方、今もその彼女が好きなのよね？ 少し時計を貸してくれない？ 」
「時計？ なんで？ 」
「いいから」
何故彼女が時計を求めるのかはわからなかった。しかし彼女の勢いに負け、彼は自分の腕時計を外し、彼女に手渡したのだった。
「ありがとう、少し待っていてちょうだいね」
そうして、彼女が時計を持ち出して、十数分。彼女が返してきたのは、針の止まった腕時計だった。
「お待たせ、さあどうぞ。……ああ、針は動かさないでね。壊したわけじゃないから」
「ならどうして？ 」
「動かしてしまったら、過去に戻ってしまうもの」
「……は？ 」
過去に戻る。即ち、タイムトリップ。何を言っているのだろうこの店主は、時間を戻せるなんてそんなはず。
「貴方に時間をプレゼントするわ。この店を出たら、戻りたい頃を強く思い浮かべて針を動かしてちょうだい。それで、あなたの悩みは晴れるはずよ。……でもね、覚えていて」
同じ未来は存在しないわ。過去を変えたら、満足の行かない未来になるかもしれない。
優しくも、しっかりとした目が彼を捉える。それは彼女が彼に嘆願しているようにも聞こえる、そんな言葉だった。
「……あの」
「Aさーん！ まだかかります？ そろそろ出てほしいんですけどー！ 」
重なるように、赤い髪の従業員の声が響く。それに応え、彼女は椅子から立ち上がった。
「……貴方の悩みが晴れるよう、祈っているわ」
「……」
彼女が行ってしまったあと。程なくして彼も椅子から立ち上がり、支払いをして店を出たのだった。
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幻想曲(プロフ) - 鳴菜瀬さん» 鳴菜瀬ちゃん！！久しぶりです、ものすごい亀更新になると思うけどまた見てくれたら嬉しいです……！ (2018年2月10日 23時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
鳴菜瀬(プロフ) - お久しぶりです。鳴菜瀬です!!覚えてるかな?久しぶりに占ツク来たら新作上がっててびっくりしました。おかえり!これからも応援してます! (2018年2月4日 17時) (レス) id: 62c6436c3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2018年2月1日 2時
