ORDER2 ページ35
「ありがとうね、謙也くん」
彼女の名前が、Aであること。彼女が喫茶店の店主であること。買い出しに出ていたところだったが、買いすぎてしまってむしろ助かったこと。
彼女に合わせゆっくり歩みを進める中で、彼は彼女の話に耳を傾けた。
幸い、店までそれほどの距離ではなく、二人は裏口から居住スペースに回り、机の上に荷物を置いたところでようやく一息をついたのだった。
「いつもならブンちゃんが居てくれるんだけど……ああ、ブンちゃんっていうのは居候兼うちの従業員の子のことなんだけどね。今日は偶然出かけてて……助かったわ」
「そんな、やめてくださいよ。ぶつかってもうて俺が謝らなあかんのに……って、せや！ 怪我！ 」
「え？ あ……大丈夫よ、擦り傷だもの」
「あかんですって！ そっから菌入ったら余計あかんことになりますから！ 救急箱あります？ 処置くらいしとかんと！ 」
彼は、Aから救急箱の場所を聞き中のものを取り出すと手早く消毒の処置を施した。
経験があったからか、はたまた彼の性格のせいなのか、あっという間にAの膝には包帯が巻かれていた。
それにはAも、ぱちくりと目を瞬くばかり。
「まあ、凄いのね！ あっという間に終わっちゃったわ」
「いやあ……昔っから慣れとるもんで」
不意に、鼻の奥を消毒液の匂いが突いた。
途端に、滲み出す銀髪の記憶。胸の奥に仕舞えどふとした瞬間に幾度も飛び出す、親友の。
「……、じゃあ俺、これで」
「え！？ ま、待って！ 流石に何もお礼もせずに帰ってもらうのは……」
「いや……そもそも俺がやらかしたことやから、気ぃ使わんで大丈夫ですよ」
「で、でも……」
謙也としては、一刻も早くその場から逃げ出したかった。
忘れられない存在を引っ張り出す香りは、ただ邪魔なだけ。早く逃げたい。ここから、この香りから、早く。走って。もっと速く。
「ねえ、それなら……せめてコーヒーをご馳走させてちょうだい。ね、それくらいなら良いでしょ？ 」
「コーヒー……」
それも、正直遠慮したいほどであった。
しかしAの食い下がらないその態度に、謙也はついに屈し胸の痛みを押さえ込みながら、有難く一杯のコーヒーに肖ることにしたのだった。
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幻想曲(プロフ) - 鳴菜瀬さん» 鳴菜瀬ちゃん！！久しぶりです、ものすごい亀更新になると思うけどまた見てくれたら嬉しいです……！ (2018年2月10日 23時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
鳴菜瀬(プロフ) - お久しぶりです。鳴菜瀬です!!覚えてるかな?久しぶりに占ツク来たら新作上がっててびっくりしました。おかえり!これからも応援してます! (2018年2月4日 17時) (レス) id: 62c6436c3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2018年2月1日 2時
