さようならの前に【DAYS】 (ページ7)

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6:クライフページ7

「お、ヨハン・クライフ！」
「え」

聞きなれない声に顔をあげれば、ドングリみたいに綺麗なまぁるい瞳の少年が私のスマホを覗き込んでいた。

吸い込まれそうだ、なんてポカンとしていれば、少年がパット顔をあげ、人懐っこい笑みを浮かべて見せた。

「あ、おれ１組の灰原だけど、水樹知らね？」
「さっき数学の先生に呼ばれてたんで、多分補習組だと思いますけど」
「補習組！？あちゃーマジか！！」

いちいちリアクションがでかいなぁなんて眺めていれば、まぁいいや、と灰原くんは空いている水樹くんの席、つまり私のとなりに腰を下ろした。

「おれも見て良い？」
「あ、どうぞ、」

イヤフォンを片方渡せば「サンキュー！」と太陽のような笑みを浮かべる灰原くん。
いや、眩しい。
止めていたYouTubeの再生ボタンを押せば、洋楽に合わせて74年の西ドイツvsオランダのハイライトが流れていく。

「うお、やべっ、」
「ニーセンスの先制は痛いよね」
「精神的にやべーもんなぁ、開始一分で先制とかキツすぎんだろー」
「ま、クライフを止めたかったのはわかるけどね、でもカード取られてからの西ドイツは強いよねぇ」
「その後のフォクツ、やべーよな、フォクツのマンマークが完璧に効いてるぜ」
「ああここ！ボンホフの駆け上がり！」
「う、っおお！！やっぱここだよなハイライト！わかってんなーお前！」

あまりの興奮からかべしべしと背中を叩く灰原くんに痛い痛いと笑う。
つい数分前に顔を会わせたばかりだとは思えないくらいの打ち解けようだが、全然違和感はない、人との距離の詰め方が半端なくうまい。