3:粗品 ページ4
差し出されたお菓子の包みに驚いて、水樹くんの顔をまじまじと見詰めてしまう。めっちゃ変わってるなこの人…何かお返しできるものとかあったかな……
「……あの、ごめんなさい、いま何も持ってなくて…」
「?……お構い無く?」
首をかしげる水樹くんにつられて私の頭も傾く。
……たぶん端から見ればこれ以上ないくらい滑稽だろう。
ちょうどその時先生が教室に入ってきて、お喋りに興じる生徒達に座るようにと指示をだした。
私と水樹くんはお互いにペコペコ頭を下げながら席について、担任の先生の自己紹介に耳を傾けることになる。
配られる手紙やら何やらのプリントを整理しつつ、健康調査表に必要事項を記入する。
生徒手帳にも名前と住所、生年月日を書いたところで、隣の水樹くんが固まっていることに気づいた。
「……あの、水樹くん」
「ん?」
「良かったらボールペン貸し、ましょうか?」
はい、と差し出したピンク色の三色ボールペンに、水樹くんはふっと目元を緩めて「うん」とペンを受け取った。
「かたじけない」
「か、…いいえ、どういたしまして…」
何時代だよ。と突っ込みたくなるのをぐっと堪えて、新しいクリアファイルにプリントを突っ込みながら、それでも耐えきれず、ついに、ふふ、と小さく吹き出してしまったのだが、どうやら周囲には聞こえていなかったらしい。
……良かった。
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作者名:豆 | 作成日時:2020年9月24日 1時