12:河原 ページ13
「え"っ!?一中ってめっちゃ強豪じゃねぇか!!」
「いや、うーん……」
「いっちゅー?」
そうか、水樹は知らねぇよな、と、自転車を押す私の傍らで、真中くんが去年の全中がどうの、秋季がどうの、都大会が云々と熱く語っている。
「うん、でも、私は女だから公式戦には出れなかったし」
「いや、つーか男に混じってやれてる時点で十分スゲーって、なんで女子サッカーに行かねーんだよ!」
「えっと……怪我して」
「えっ」
二人の視線が一気にこちらに向く。
「あ、いや、怪我って言ってももう治ってるし……ただ、あー、半年も練習できなかったし」
そっか、と、真中くんは沈んだ声で返事をして、水樹くんは地面を見たまま何も言わなかった。
こんな空の暗い時間に帰宅することになるのは久し振りだ。
公式戦にも出してもらえないくせに、毎日毎日最後の一人になるまでボールを蹴って。
紅白戦に出られるだけで嬉しくて、練習試合に出れる日なんて、興奮して眠れなかったから、真夜中に走り込みして試合中に眠気に襲われたりして……。
「サッカーしよう」
「え?」
「やろう」
「ちょ、水樹くん!?」
「はは、良いな!今なら河川敷空いてんだろ!」
「真中くんまで!!」
いこーぜいこーぜと先を行ってしまう真中くんと、聞く耳を持たない水樹くんに自転車を押されずんずんと暗い河川敷に降りていく。
誰が置いたのかも知らないゴールがあって、折角の芝生は踏み荒らされて剥げている。
普段は少年サッカーチームが使っているフィールドだ。
「ほら優利!」
「あ、うわ、っと、」
ぽーんと放られたボールが、足の内側に触れてすとん、とあるべき場所へハマるように落ちる。
「お、上手いな!」
「今のどうやったのか教えてください」
「え、いや、普通のトラップだけど……」
ころり、と、足の裏で転がる泥で汚れたボール。
「へぇ、左利きなんだ?」
「あ、うん、そう」
「ふーん?ほら、水樹も来いよ!」
「え、ちょ、あーっ、」
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作者名:豆 | 作成日時:2020年9月24日 1時