10:練習 ページ11
「悪いな、えーっと、優利」
「いえ、別に一日くらい、暇ですから」
そうかと呟いた中澤先生、もとい中澤監督は部員を集め、今日の練習はここまでだと伝えた。
今週末には他校との練習試合があるらしく、明日は視聴覚室でミーティングから入るらしい。
そのまま帰宅する部員の何人かは、私とすれ違うときに「お疲れ様」と声をかけていったが、多くの部員はまだ居残って自主練に励むようだった。
「お、優利」
「真中くん」
「今から暇？」
「え？あ、あー、はい、まぁ」
「じゃ、玉出ししてくんね？水樹とシュート練すっからさ」
頼むわ、と笑った真中くんに、向こうの方で水樹くんが両脇にボールを抱えたままいつもの無表情で待っていた。
「……うん、良いよ」
「さんきゅ！じゃーいこーぜ」
ボールのいっぱいに詰まったかごをゴロゴロ押しながら、錆びたゴールの前に真中くんと水樹くんが並ぶ。
「とりあえず蹴ってみろよ」
「うん」
そう言った水樹くんは、とんっと軽く地面を踏みしめたかと思えば、盛大に空振りをしてどすんと尻餅を着いた。
いっっや、ヘッッッタクソ……。
思わずポカンと口を開いてしまう私に、真中くんも、あー、と天を仰いでいる。
いやいや。それにしても酷いな……。
「引っ掛けて持ち上げるんだよ」
こうやって、と、真中くんが蹴ったボールは中々のスピードでゴールへ突き刺さった。
おぉ、と感心する水樹くんに、やってみろとボールを出すが、へろへろのごろがゴールへ届く前に勢いを失い止まった。
うーーーん、ヘタクソ……。
「……この、親指の付け根んとこにだな…」
「付け根……」
「とひゅん、て感じ」
「え？」
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作者名：豆 | 作成日時：2020年9月24日 1時
