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「……」
「突然でごめんね。こういう仕事をしてると、情報には敏感になっちゃうんだ」
いつの間にか、彼の顔には笑みが戻っていた。
彼は、それ以上のことは言わなかった。彼女の細工の秘密、彼女の技術、そういったものへは一切言及することは無かった。
彼はただ、『クロック』の一顧客として彼女の前に存在していた。
「……理由を聞いても良いかしら？ 」
「わかった。じゃあ、少し昔の話をしても良いかな」
そう言うと彼は懐かしそうに、少しもの悲しそうに、昔の話を始めた。
「昔ね。中学の時、友達がいたんだ。同じ部活、同じクラスでさ。でも性格は違う……仲が良かったのが不思議だよ。……その辺りの友達って、不思議だよね。なかなか縁が切れなくてさ。高校、大学と僕達は仲良しだった。やがて、彼はスカウトがきっかけで、芸能界に行った」
「え！？ 芸能界！？ ってことはカメラマンさん、ゆ、有名人と知り合いなんですか……！？ 」
「まあ、そうなるね。過去形になるけど。……僕もね、彼につられて……って言ったら変だけど、あるカメラマンに弟子入りさせてもらって、その人のところで勉強してたんだ。テレビ雑誌とか、そういうものの人を撮る人でね。カメラに触らせて貰えるようになる頃には、撮影で彼と顔を合わせることもあったよ」
「へえ……すごいじゃないですか。……あの、ちなみに友達って……」
「知りたい？ 君なら驚くと思うな。英二っていうんだ。菊丸英二」
瞬間、聞いたこともないようなブン太の声が店の中に轟いた。
Aが彼を睨みつけたのは、言うまでもない。
「でも、そんなに仲が良かったのにどうして離れてしまったの？ 貴方の話ぶりだと、もう交流はないのよね？ 」
「うん……実はね。撮っちゃったんだ。彼のスキャンダル写真」
再び勿体ぶることなく、彼は言葉を放った。
それはどことなく重みと、そして黒く塗り潰された悲しみを含んだ、そんな口調だった。
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます！表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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