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「お待たせしました。本日のお菓子、クレームブリュレのセットです」
「ありがとう」
日替わりのスイーツセットのことは、何度か噂には聞いていた。素朴なものからお洒落なものまでいろんなお菓子が楽しめて、それはどれも美味しく、コーヒーによく合うのだとか。
朝とはまた違う黄金色。ふと、彼はそれに何か、既視感を覚えた。
きらきらと光る焦げ茶色。まあるい形。ああそうか、と彼はスプーンを手に取った。
これは、カメラのレンズだ。焦げて固まった砂糖のレンズ。何を見てるか、どこまで写しているのかわからない丸い形。
スプーンでそれをつつき、ひびを入れる。下の黄色いカスタードと共にスプーンに載せ、口に運んだ。
カラメルのほろ苦さがしゃくりと解け、同時にバニラと卵の香りが口いっぱいに広がった。ずしりと舌に乗る甘さは、カラメルの苦さと絡まりあって程よく彼の体に染みて、落ちていく。これは噂通りの腕だと、彼は頷いた。
一口コーヒーを啜れば、また違った味わいへと彼を誘う。困ったことに、それは同時にクレームブリュレとコーヒーとの永久運動を促すものでもあった。
甘い物とコーヒー、取り分けそれに合わせてブレンドされたものはとてもよく合う。ふうと彼が一息つくと、カラコロとカウベルが鳴った。
「ありがとーございましたー」
どうやら、テーブル席の客が全て帰ったようだった。レシートの整理を終えたブン太が、カウンターへと戻って来た。
「あー、どうですかカメラマンさん。今日の、割と自信作なんですよ」
「ああ、美味しいよ。とてもね」
「良かった、まっ俺の作ったもんが不味いって訳ないだろうけどなぃ！ 」
「ふふ、そうだろうね。……お客、僕一人になっちゃったね」
「そうね……カメラマンさんは賑やかな方が好きなの？ 」
「いや。むしろ好都合だったよ。こうなるまで、マスターには申し訳ないけど粘ろうと思ってたから」
彼はスプーンを置き、カウンター越しのAを見た。青い瞳が、静かに彼女の瞳を捉える。
「マスター。僕、時間が欲しいんだ。昔に行きたいんだよ。お願いできないかな？ 」
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます！表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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