ORDER3 ページ4
「んー、どれも美味そうで迷うな……神尾決まった？ ……神尾？ 」
「……？ あ！ 何！？ 」
その声に、慌てて意識を現実に引き戻した。今は、頼むものを決めなくては。
覗いたメニューの文字を追っても、一度ぶり返した記憶はなかなか消えない。悩んだ挙句、彼はアイスコーヒーと共にシュークリームを頼むことにした。
金が無いとぶつぶつ悩んでいた桃城も、結局は彼と同じものをオーダーした。店員が去ってから、何気なく。本当に何気なく、アキラは話を切り出した。
「なあ、桃城。……覚えてるか？ 杏ちゃんのこと」
「あー、橘妹？ 」
「お前まだその呼び方してんのかよ」
そう言ってみたところで、何の躊躇いもなく下の名を呼ばれるのもそれはそれで泡を食うのだが。
何を唐突に、とその時は首を傾げた桃城であったがやがて何かを察したのか、みるみるうちに目元と口元が同時に緩んだ。
「え、お前もしかして橘妹となんかあったの？ それとも片思い？ 」
「う、うるせえぞ！ 野次馬根性見え見えな聞き方やめろよ！ ちょっと思い出しただけだろ！？ 」
事実、アキラと杏の間には何も無かった。それどころか、連絡もずっと取っていなかった。
彼女の兄＿＿アキラの部長でもあった橘桔平やチームメイトとは度々連絡を取っているが、不思議と杏本人と連絡を取れる勇気は、彼にはなかったのである。
結局は意気地のない、だらだらと惰性で続いた彼の片思いでもあるのだが。
「おまたせしましたぁ」
程よいタイミングで、白い皿が二人の前へと降りてくる。
「シュークリームとアイスコーヒーです、ご注文以上でよろしいですか？ 」
レースが象られたペーパーナプキンの上に行儀よく乗ったシュークリーム。氷の揺れるアイスコーヒー。
なんて、絵になる光景だろう。
店員への対応もそこそこに、彼は堪らずシュークリームに手を伸ばしたのだった。
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます！表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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