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突然の申し入れに、Aさんはフォークを握ったままぱちくりと目を瞬かせた。
「喫茶店! やってるんですよね!? 俺、学生なんですけど来年春に卒業するんです!! 今勤め先探しててっ……ここで菓子作らせてくれませんか!? 」
「……ぶ、ブン太くん? 」
「給料そんな高くなくて良いんです! 俺、こんなに美味いコーヒー飲んだの初めてでっ……いっつも砂糖大量に入れないと飲めないのに、ここのはすっと飲めて、しかも俺の菓子とめっちゃ合うなってびっくりして! 」
もちろん理由はそれだけじゃない。でも、この理由も事実だ。
「スイーツもセットで売れば、ここの売上も上がると思います! だから、お願いしますっ……! 」
俺がパティシエになりたいと思ったのは、自分の作った菓子で一人でも多くの人を笑顔にしたかったから。そんなこと、有名な菓子屋に行かなくったって出来ると思う。
現に、俺はここでたくさんの人を笑顔にしたい。
もちろん、Aさんのことだって。
「……ありがとう、ブン太くん。そうね、貴方のお菓子とっても美味しいもの……けど、お給料はそんなに払えないと思うけど……」
「いいです、全っ然いいです! よろしくお願いします! 」
「なら……」
……とまあ、こんな感じで暑すぎる九月。俺の勤め先は、この喫茶『クロック』に決まった。
Aさんの食う顔に一目惚れしたから……なんてのは、彼女には秘密のままだけどな。
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます!表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2019年4月5日 16時) (レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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