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コーヒーを注ぎ終えてから、Aさんはフォークを手に取った。さて、俺も味見。
格子状に敷き詰めたパイ生地にフォークを入れて、ごろごろ飛び出すリンゴと一緒に口の中に放り込む。はらはらと解けた薄いパイに、甘酸っぱいリンゴがよく染みる。サクサクの歯ごたえに、バターもしっかり際立ってる。
うーん、俺ってやっぱり天才的！
「美味しい！ 」
「でしょ？ よかっ……」
言いかけて、俺は思わずフォークを落としそうになった。
全身が電気で痺れたみたいに動かない。たちまち、収まったはずの火照りが顔に集中した。
幸せそうな笑顔。正に、溶けてしまいそうなって表現がぴったりなほど顔中を緩めて、Aさんはアップルパイを頬張っていた。
その笑顔は、俺が今まで見た中で誰よりも幸せそうで、素敵で、あと。
……ああ、何て言やあいいんだ？ なんて言うか。ずっと見てたいっていうか。作ったかいがあったっていうか。
言葉の正体が見つからないまま、誤魔化すようにカップを手に取った。一口啜って、仰天。
「えっ、美味っ！ 」
苦味が一瞬で溶けて、ほの甘さに変わった。一瞬、ブラックだって気が付かなかった。
苦味？ 酸味？ それがバターの旨みでいい感じに調和されてる。鼻に抜けてく香り……花みたいな感じの匂いも、何て良い香り。
「美味しいでしょう？ 」
テーブルの向こうで、Aさんが得意げに笑う。また、頬が火照った気がした。
ああ、俺。この人のためにいろいろ、作ってあげたいかも。
他のものを食ったら、どんな反応してくれんだろう？ 他にも沢山、美味いもんを作れる。何が良い？ クッキー？ パウンドケーキ？ タルト？
……そういや、この人喫茶店やってるって。
「っAさんっ！！ 」
思い出した時が吉。思い立ったらすぐ行動。俺は席から立ち上がり、前のめりになりながらAさんに言った。
「俺、ここで雇ってくれませんか！？ 」
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます！表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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