囚われの姫

願い ページ10

自由になって、願いを持つようになった。

『安室透の家』に慣れてきた私は、だんだん見ているものがつまらなくなってきた。部屋、調理器具、家具。全てが見飽きてしまった。

｢とーる、はやくかえってきてくれないかな……｣

今日も部屋の中から空を眺める。いつも見ている空に雲にいつも描いている絵。全てが飽きてしまった。

｢そと、いきたいな｣

この生活になるはるか前、私は自由だった。歩くことも、外に出ることも、食べることも飲むことも寝ることも。絵を描くことに飽きたら本を読む、ゲームをする、散歩に出かける。あの日までは全て自由だった。

｢つまんない。そとにいきたい。いろんなところへいきたい｣

彼に言えば外に出してもらえるかな。一緒に散歩してくれるかな。彼の働いている喫茶店に行くのもいいな。探偵の仕事に付き合うのもいいな。安全なものなら、いいよって言ってくれるかな。

｢……えをかこう｣

なんとも言えないこの気持ち、紙とペンで表現するのには難しいかもしれないけれど。それでも、私は表現できると思った。

｢とーる、よろこんでくれるかな｣

描きあげたのは私と彼と空の絵。彼はきっと、これだけで分かってしまうのだろう。私が、外に行きたいことを。

｢はやく、あいたい……｣

視界がだんだん狭くなっていく。意識が朦朧としてくる。次に明るくなった時は彼に会えることを祈って、眠りについた。

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