ケーキ ページ9
幼い彼女は、とてもとても大人だった。
「とーる、でざーと」
「もうすぐできるよ」
人参を一瞬で食べきった彼女のためにケーキを作っている。人参を食べられるようになっていたんだな……と柄にもないことを思う。
「わたし、にんじん、たべたよ」
「うん、だからとびきりのを作っているよ」
「とびきりのなら、がまんする」
と言い残し自室に籠ってしまった。彼女は今、絵を描くことにハマっているらしい。紙をねだってはペンをねだり、自室に籠る。どんな絵かは見せてくれない。まだ下手だからと。
「Aちゃん、ケーキできたよ」
「けーき!」
作っていたのは綺麗な綺麗なショートケーキ。甘さ控えめに作ってある。だが、これには秘密がある。
「たべていい?」
「いいよ」
「いただきます!」
ひとくち、ふたくち、みくち。だんだん険しくなる表情に思わず口角が上がる。
「とーる、これ、へんなあじがする」
「そうかい?」
「うん……。これ、ぱぷりかはいってる…きがする」
なんと、分かってしまうとは。スーパーで甘いものを買ってきて、砂糖と一緒に混ぜて焼いたというのに。子供だと思っていたが味覚は大人らしい。ふと、脳裏によくポアロに来る少年が浮かんだ。だが、彼女の質問で消えた。
「ねーとーる、ぱぷりかはいってる?」
「はいってるよ」
「ほんと?」
「本当」
「……わたしね、このぱぷりかならたべれる」
まさか、ケーキ作戦が成功するとは。もう食べないって言うのかと思ってたのに。
「本当かい?」
「ほんとー」
言っていることがさっきと逆になっていることに気づいて、彼女は笑った。きらきらと、美しかった。
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Code(プロフ) - 姫でした…すみません (2018年6月21日 20時) (レス) id: 07dcc038dd (このIDを非表示/違反報告)
Code(プロフ) - 明里香さん» 指摘ありがとうございます!些細なミスで楽しい気分を台無しにしてしまい申し訳ありません。すぐに直します!ミスがないようにしますが、もし誤字脱字等ありましたらまたご指摘してくださると嬉しいです!これからも『囚われの少女』をよろしくお願いします! (2018年6月21日 11時) (レス) id: 07dcc038dd (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「性」ではなく、「姓」です。 (2018年6月21日 8時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
Code(プロフ) - ふるるさん» ありがとうございます!少しずつ更新していくので降谷さんと夢主ちゃんのこれからを見守っていただけたらなと思います! (2018年6月17日 23時) (レス) id: c72d04c443 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる - 題名に惹かれてきました!面白くてこれからどうなるかドキドキします!頑張って下さい! (2018年6月17日 8時) (レス) id: c313831c97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Code | 作成日時:2018年6月13日 0時