囚われの姫

守りたい ページ6

舌っ足らずに話す彼女を俺は初めて話した時から愛おしく感じていたんだ。

19時、眠っている彼女を起こそうと部屋に入ろうとした。ドアノブに手をかけた時思い出す昼間の出来事。

ー安室……という名字を名乗らないか？ー

夜になっても思う。あれはプロポーズか？ と。自身の発言にツッコミを入れてしまうほど、自分の中では想定外の出来事だった。

｢Aちゃん、起きて｣

｢んぅ……｣

喝を入れて起こそうとすると可愛い声が聞こえる。安心しきっている声色にふっと頬が緩む。あぁ、ここは彼女にとって安心できる場所なんだなと嬉しくなる。彼女が来てからまだ3日も経ってないけど。

｢起きて、ご飯だよ｣

｢ごはん｣

むくり。効果音がつきそうなくらい見事な起き方で驚く。

｢ごはん｣

｢こっちだよ｣

お腹が空いてるようで、ごはん、ごはん、とせがんでくる。可愛い。
リビングへ案内すると気づいたら席に座ってた。早すぎじゃないか。そんなに楽しみなのかと笑ってしまう。

｢ごはん、さかな、おみそしる｣

｢和食は嫌い？｣

｢んーん、すき｣

｢よかった……冷めないうちに食べよう｣

｢うん。いただきます｣

｢いただきます｣

もくもくと食器の中を減らしていく。静かな空間に食器がぶつかる音がする。

｢おいしい……｣


その顔を見た時、この笑顔を守りたいと本気で思った。

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