囚われの姫

その笑みは ページ14

彼女を見た時、自分はしてはいけない過ちを犯したことを知った。

カンカンカンカン。金属がいい声で鳴く。早く、早く、早く。鍵が刺さらない。手の震えが止まらない。ドアの向こうにいるであろう少女に何かあったら。そう思えば思うほど、手が震える。足が震える。

｢くそっ！｣

何故刺さらない、何故上手く握れない。何かあってからでは遅いのに……！
ガチャリ、重い音が響く。

｢A！｣

倒れている彼女を見つけて、息が詰まる。大声で名前を呼び、揺する。反応がない様子に心臓がバクバクと音を立てる。あぁ、うるさい。

｢んん……｣

｢A！｣

もう一度名前を呼ぶ。目が合う。よかった……。いつの間にか止まっていた呼吸に驚くと彼女は笑った。

｢おかえり｣

｢……っ、ただいま｣

｢おなか、すいた｣

｢……すぐ、何か作るね｣

調理場に立ち、料理を作る。途中から視界が滲んで、何かが落ちた。ぽたりぽたりと、目いっぱい溜めては落ちる。

｢できたよ｣

ゆったりと起き上がって、もそもそと食べる。ぱくぱくと勢いよく食べていた彼女とは大違いで、このまま家に帰ってなかったらどうなっていたんだろうと、不安で不安でしようがなかった。

｢おいしい｣

｢よかった｣

｢とーるはたべないの？｣

｢僕は、おなかいっぱいだから。たくさん食べていいよ｣

｢やった、ありがとう｣


その時浮かべた笑みに、ゾッとした。

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