コード・ブルー（ Ⅲ ） 9→10［前編］ (ページ48)

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そのころ…HCUでは

冴島「これ」

冴島は藤川にペンライトを差し出した。

藤川「あっ、俺の」

藤川はそれを受け取る。

冴島「翔くんが返しに来てくれたの」

藤川「そうか、元気だった？」

冴島「うん、とても」

藤川「よかった～」

藤川は安心したように笑った。

すると、冴島から笑顔が消える。

冴島「ホントはどう思ってる？」

藤川「なんの事？」

冴島「私のために選んでくれたことなのに、
今さらごめんなさい。

でもホントに、一般整形に移って外来をこなす日々を望んでる？」

さっき、藤川が整形外科に移ると白石に言ったこと

きっと本心ではないことに冴島は気が付いたのだ

藤川「また、あんな事故が起きたらどうするか...
こんな酷い目に遭っても、地獄みたいな現場にまた向かうのか...。

残念ながら俺は知っちゃってるんだよな。

翔くんみたいな子供が暗い道で怖くて泣いてることや、田崎さんみたいに冷たい線路と瓦礫の上で1人死にかけてる人の事を。」

冴島は黙り込んでしまった。

すると、今度は藤川が尋ねる。

藤川「なあ、ずっと気になってた事があるんだけど」

冴島「なに？」

藤川「はるかは…、、何で俺を選んだの？」

藤川は今まで聞いたことがなかったのだろう。

このことは
以前Aにしか冴島は話してなかった。

冴島「えっ？

…悟史は私のずっと前を歩いてた人。

時々振り返ってはくれたけど、自分のペースでどんどん行ってしまう人だった。

あの時の私は、必死に追いかけるのが楽しかった

あなたは一緒に歩いてくれる。

私が元気な時は一緒に走ってくれて、疲れている時は一緒に腰を下ろして笑ってくれる。

...先に行く事ができる時も待っててくれる。

でも...私のために行きたくない所へ
行こうとしないでほしい。

私は...あなたが選んだ道を一緒に歩きたい。

本当に行きたい道を歩いて」

冴島は言葉をしぼりだすように言った。

その思いがひしひしと伝わってきた藤川は…

グイッ…、

…ぎゅっ。

片手しか使えないがぐっと冴島を引っ張り、
抱きしめた。