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「A、さっきのはさ、その…ね?」



医局に戻りICUに入院している患者さんの

記録をまとめてから優輔くんの治療法について

考えていると医局のドアが開き、

言い訳をするように美帆が私の隣に座ってきた。



『仏頂面なんでしょ?』



必死な顔をしている美帆が面白くて

目線を合わせないまま答えると

「違うって…」とさらに慌て始める。



『嘘だよ。ごめん、ごめん。

こっちこそ、この間は話聞いてくれてありがとう。

なんだか肩の力が抜けたような気がするよ』


「それなら良かった」



美帆はにっこり笑って自分の席に戻る。


恐らく脳死の山口匠くんの書類をまとめているのだろう。



「17歳か…。大丈夫?」



医局に入ってきた恵が美帆に声をかける。



「うん、大丈夫よ。

フェロー1人手伝わせてるから」


『そうじゃなくて…』



恵の代わりに言葉を発するとゆっくりと美帆は顔を上げた。



「あぁ。大丈夫、大丈夫。規則通りやる。

私もそんなに若くないって」



言葉にしなくても分かる。


私たち3人の間にはフェローの時に美帆が担当した

野上翼くんのことがよぎっている。


でも、美帆の笑顔につられて私も恵も笑顔になる。



「あれ、これ記入しとけって言ったのに…。

腹立つわ。行ってくる」


「ほどほどにね」


「はい」



少し荒々しく医局を出て行く美帆を見送ってから

恵に話しかける。



『…、大丈夫そうだね』


「そうね。心には残ってるみたいだけど」


『それでいいんじゃない?

完全に忘れるなんて無理だよ』


「そうだね」



心の傷は簡単に癒えることはないし

忘れることもできない。


でも、無理に忘れようとする必要はない。


その心の傷でさえ今の私たちには必要なことだったから。

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まお(プロフ) - キムチさん» こんちには(^^)コメントありがとうございます。リクエスト、承りました。本編が落ち着きましたら執筆させて頂きますので、しばらくお待ちくださいませ。この度はリクエスト頂きありがとうございました。 (2018年8月31日 15時) (レス) id: a4581f7272 (このIDを非表示/違反報告)
キムチ(プロフ) - リクエストです。冴島さんと夢主ちゃんが喧嘩をするお話を作ってください!おねがいします (2018年8月31日 13時) (レス) id: ce6e0260a0 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 灯火花道さん» コメントありがとうございます!私もいつも楽しく読ませていただいております(^^)頂いたお言葉を胸にこれからも精進してまいります! (2018年8月27日 13時) (レス) id: a4581f7272 (このIDを非表示/違反報告)
灯火花道(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます!とても面白いです!文才もあるし、羨ましい…!!これからも更新頑張ってください!応援してます☆ (2018年8月27日 12時) (レス) id: 9d8469fa19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まお | 作成日時:2018年8月25日 10時

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