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「…………ん、」
身体に何かが触れる感覚に、
凛はゆっくりと瞼を上げた。
「……大丈夫ですか」
すっきりとした瞳と視線が合う。
ふわりとパーマのかかった髪が揺れていた。
「……私………」
「急に倒れたんです。
状況、覚えていますか」
視線を目の前の男性から逸らし、周囲に巡らせる。
そこは散歩の途中で訪れた公園だった。
凛は横になっており、男性は傍にしゃがんでいた。
「どのくらい、経っていますか」
ぽつりと尋ねると、男性は自身の腕時計を見る。
「2分ぐらいです」
「……ありがとうございます」
ゆっくりと身体を起こそうとすると、
男性が背中に手を添えてくれる。
ふるふる、と凛は頭を振った。
「現状では原因が分かりません。
病院に行ってください」
「え?」
冷静な男性の声に、凛は首を傾げた。
その言葉は、とても一般の人間のものとは思えない、
同業者の言葉のようだった。
男性は凛の様子に、あ、と呟く。
「俺、医者なんです」
少し触診させてもらいました、と男性は言う。
身体に触れるような感覚はそれだったのか。
「行きつけの病院があるので、そこに向かいます」
凛はふ、と男性に笑いかける。
その表情に男性が安心したように息をついた。
「ありがとうございました。
ご迷惑をおかけしました」
立ち上がりながら言うと、男性は首を振る。
「ひとりで大丈夫ですか」
「はい。
私も、医者なんです。大丈夫ですよ」
凛の言葉に、男性は目を丸くした。
そして、口元に小さな笑みを浮かべる。
─────凛。
その男性の表情は、どこか父親に似ている。
そう凛は感じた。
そして同時に、凛の名を呼ぶ声が、聞こえた気がした。
「……どこかでお会いしたこと、ありますか」
そう男性に問いかけたが、
彼はきょとん、として首を横に振った。
「ですよね。ごめんなさい」
「病院、近いんですか」
「はい。すぐそこです」
「そうですか。なら、俺はこれで」
「ありがとうございました」
小さく会釈をする男性に、凛は深々と頭を下げた。
そして去って行く男性の背中を見送った。
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ri_n(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメントありがとうございます。失礼致しました!訂正しましたm(_ _)m (2017年10月13日 2時) (レス) id: a553a04bd8 (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 設定の[それが凛の生きる意志。]から名前固定されています! (2017年10月11日 23時) (レス) id: 4e8990689c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ri_n | 作成日時:2017年10月11日 17時