ただ、傍に。 - 藍沢 ページ4
▼凛はＡＬＳ(筋萎縮性側索硬化症)の１７歳。
時間軸はseason２の田沢さんが亡くなった後。
「ここにいたのか」
藍沢は屋上で空を見上げている少女に声をかけた。
その声に反応し、少女が藍沢を見る。
「藍沢先生」
にこりと微笑む少女、凛。
藍沢は車椅子に乗った彼女へと近づく。
「診察に来たなら、きちんと待ってろ」
凛を見かけた、と看護師から聞き、
藍沢は少女の姿を探していたのだ。
「診察じゃないよ」
ん？、と藍沢が首を傾げると、
凛は藍沢を真っ直ぐ見つめる。
「田沢さん、亡くなったって聞いた」
「！」
田沢──それは先日、
ＡＬＳで亡くなった患者の名前だった。
ＡＬＳ──筋萎縮性側索硬化症──は
医学が発展した現代でも治療法のない、難病。
凛は、その病に侵されていた。
同じ病気ということで、
凛は田沢と話すことが多かった。
凛にとっては、誰よりも心の支えだった。
「……藍沢先生」
藍沢を見つめる瞳が潤み、涙が溢れた。
「私、怖いよ」
死ぬの、怖い、と震える手を藍沢へと伸ばす。
凛は麻痺の出ている手で、
力なく藍沢の腕を掴んだ。
少女に突きつけられた現実の重さは、
藍沢には想像もできなかった。
藍沢は震える凛の手を掴む。
そのまま強く、握りしめる。
「…………俺には、何もしてやれない」
ごめんな、と藍沢は小さく呟いた。
凛の瞳からは次々と涙が溢れ、
頬を伝っていた。
藍沢はそっと凛の頬に触れ、涙を拭う。
「ただ、傍にいるよ」
藍沢の言葉に凛は驚き、目を見開く。
「お前が１人で泣かないように、俺が傍にいる」
少女を救う術は、何一つない。
藍沢にできるのは、彼女に残された時間を、
彼女が少しでも笑えるようにすることだけだった。
「せんせ……、ありがとう……っ」
３年後、凛は息を引き取った。
田沢同様、延命は希望せず、
眠るように、その生涯を終えた。
藍沢は彼女の傍にいることを決めた屋上で、
あの日の凛と同じように空を見上げた。
世の中には、どんなに願っても
救えない命がある。
それでも、
──藍沢先生、ありがとう。
最期の瞬間を
笑顔で迎えさせてあげることができたなら、
その心は、救ってあげられたのかもしれない。
「安らかに、な」
藍沢は空に向かって、呟いた。
Fin.
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ri_n(プロフ) - ユーラさん» コメントありがとうございます(*^^*)リクエスト嬉しいです！検討します*(^o^)/* (2017年11月1日 12時) (
レス) id: a553a04bd8 (このIDを非表示/違反報告)
ユーラ - Secret loveがと手の好みです！ もしよかったらくっつくまでの続編が見たいです！ (2017年10月31日 12時) (レス) id: 86e1c6423c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ri_n | 作成日時：2017年9月25日 20時
