検索窓
今日:28 hit、昨日:8 hit、合計:52,259 hit

Last time . 05 ページ21

.





翔北救命センター、スタッフルーム。

緊急外来や救急車の受け入れもなく、
白石は凛が置いて行った雑誌に目を通していた。


「凛ちゃん、すごいね」

「は?」


白石に背を向けてパソコンの画面を見ていた緋山は、
その声で彼女を振り返る。

白石はにこにこと笑みを浮かべながら
雑誌を緋山へと向けた。


「こういうのは、患者側の視点が強くて、
医師や病院の落ち度ばかり指摘するのが多いのにさ、
凛ちゃんの記事は病院の良さがうまく引き出されてる」

「通常のライターが書く記事とは思えないですよね」


白石の言葉に、
カルテの整理をしていた冴島が同意を示した。

緋山は2人に眉を寄せ、息をつく。


「だって医師免許持ってるし、
病院勤めてたもの、凛」

「え?」


緋山の言葉に、白石と冴島は目を丸くする。


「でもある日突然病院辞めて、
カメラ片手にライターになるって。
なに考えてるのか解んない子よ」


緋山はパソコンへと向き直り、
その様子に白井と冴島は目を合わせ、首を傾げた。

その時、緋山のポケットから
着信を告げるバイブレーションが響いた。

緋山はスマホを取り出し、画面を見る。


「……藍沢だ」


凛のやつ、何かやらかしたか、
と緋山は眉間を皺を寄せ、通話を押す。

その背後で、消防からの入電が鳴り響いた。


「もしも──」

『緋山っ』


緋山の声を、藍沢の焦ったような声が遮る。

息が上がっているようにも聞こえる藍沢の声。

藍沢の息遣いの向こうで、
藤川と誰かが話す声が小さく聞こえ、
救急車のサイレンが響いていた。


「藍沢、どうしたの?」

『────心停止した』

「緋山先生!」


え、と緋山が掠れた声を上げると、
背後で白石が緋山を呼ぶ。

緋山が振り返ると、
消防からの電話を受けていた白井が手を震わせていた。



『凛が、心停止した』



ごとん、と緋山の手からスマホが落ちた。









ピー、と無機質な音が鳴り響く。

波打つことのない直線がモニターに表示される。


「…………凛……」


緋山は凛の血液に濡れた手で、彼女の頬へと触れる。

血の気のない、真っ白な顔は、
どこか微笑んでいるようにも見えた。


「……凛っ………」


緋山の声が震える。

その様子に、藍沢は指先を強く擦った。





.

Last time . 06→←Last time . 04



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
117人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ri_n(プロフ) - ユーラさん» コメントありがとうございます(*^^*)リクエスト嬉しいです!検討します*(^o^)/* (2017年11月1日 12時) (レス) id: a553a04bd8 (このIDを非表示/違反報告)
ユーラ - Secret loveがと手の好みです! もしよかったらくっつくまでの続編が見たいです! (2017年10月31日 12時) (レス) id: 86e1c6423c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ri_n | 作成日時:2017年9月25日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。