Last time . 05 ページ21
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翔北救命センター、スタッフルーム。
緊急外来や救急車の受け入れもなく、
白石は凛が置いて行った雑誌に目を通していた。
「凛ちゃん、すごいね」
「は?」
白石に背を向けてパソコンの画面を見ていた緋山は、
その声で彼女を振り返る。
白石はにこにこと笑みを浮かべながら
雑誌を緋山へと向けた。
「こういうのは、患者側の視点が強くて、
医師や病院の落ち度ばかり指摘するのが多いのにさ、
凛ちゃんの記事は病院の良さがうまく引き出されてる」
「通常のライターが書く記事とは思えないですよね」
白石の言葉に、
カルテの整理をしていた冴島が同意を示した。
緋山は2人に眉を寄せ、息をつく。
「だって医師免許持ってるし、
病院勤めてたもの、凛」
「え?」
緋山の言葉に、白石と冴島は目を丸くする。
「でもある日突然病院辞めて、
カメラ片手にライターになるって。
なに考えてるのか解んない子よ」
緋山はパソコンへと向き直り、
その様子に白井と冴島は目を合わせ、首を傾げた。
その時、緋山のポケットから
着信を告げるバイブレーションが響いた。
緋山はスマホを取り出し、画面を見る。
「……藍沢だ」
凛のやつ、何かやらかしたか、
と緋山は眉間を皺を寄せ、通話を押す。
その背後で、消防からの入電が鳴り響いた。
「もしも──」
『緋山っ』
緋山の声を、藍沢の焦ったような声が遮る。
息が上がっているようにも聞こえる藍沢の声。
藍沢の息遣いの向こうで、
藤川と誰かが話す声が小さく聞こえ、
救急車のサイレンが響いていた。
「藍沢、どうしたの?」
『────心停止した』
「緋山先生!」
え、と緋山が掠れた声を上げると、
背後で白石が緋山を呼ぶ。
緋山が振り返ると、
消防からの電話を受けていた白井が手を震わせていた。
『凛が、心停止した』
ごとん、と緋山の手からスマホが落ちた。
ピー、と無機質な音が鳴り響く。
波打つことのない直線がモニターに表示される。
「…………凛……」
緋山は凛の血液に濡れた手で、彼女の頬へと触れる。
血の気のない、真っ白な顔は、
どこか微笑んでいるようにも見えた。
「……凛っ………」
緋山の声が震える。
その様子に、藍沢は指先を強く擦った。
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ri_n(プロフ) - ユーラさん» コメントありがとうございます(*^^*)リクエスト嬉しいです!検討します*(^o^)/* (2017年11月1日 12時) (レス) id: a553a04bd8 (このIDを非表示/違反報告)
ユーラ - Secret loveがと手の好みです! もしよかったらくっつくまでの続編が見たいです! (2017年10月31日 12時) (レス) id: 86e1c6423c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ri_n | 作成日時:2017年9月25日 20時