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◆◆◆
「……どうやら彼は無関係のようね」
毛利探偵事務所の真向かいの屋上に、全身を黒で固めた男女が数人。彼らは急遽変更になったターゲットである毛利小五郎を狙撃するために集まっていた。
彼らは毛利小五郎の背後をとると、その耳にイヤホンがはめられていることから、わざと壊さずに音を拾わせ続けていた盗聴器を、また音が拾われることを熱心に待ち聴いているのだと決めつけ狙撃の準備を始めた。
だが、その最中に現れた少年によって、そのイヤホンからは競馬の実況が流れていたことが判明する。
真っ黒なライダースーツを着た女性――ベルモットが、やれやれといった様子でこの場にいる仲間にそう語りかけた。
自分たちの会話を盗聴していた人物は毛利小五郎ではないと、彼女は判断したのだ。
だがしかし、そんな彼女の言葉に対し、間髪入れずにこれまた真っ黒なコートに身を包んだ男――ジンは口を開いた。
「殺れ……ガキもろとも……」
「あいよ!」
返事良く、女のスナイパーであるキャンティが銃を構えスコープを覗いた。
彼女の覗くその先には、メガネの少年が二人映った。
照準を合わせ、引き金に手をかける。
残すは指示一つのみとなった所で、遮るようにベルモットが口を開いた。
その声にはどこか喜びが含まれているようにも思えた。
「あら、あの子……」
その言葉を聞いたジンは、屋上から顔を覗かせ、ベルモットの言う「あの子」を自らの視界に入れる。そして一度眉をひそめると、
「チッ、どうやらコイツはお開きになりそうだな……」
とだけ呟いた。
――ちゃんと私のメール見てくれたのね。Thank you, My kid.
ベルモットは腕を組み、ニヤリと笑った。
ジンの呟きに「エッ?」と驚きを隠せないウォッカ、そして続けてスナイパーのキャンティとコルンも動揺を見せた。
どうも理解の出来ない彼らに対し、ベルモットは説明を加えるように話す。
「私の可愛いkid、まさか殺すだなんて言わないわよね?」
先程の言葉だけでは不満を漏らしていた三人は、その言葉に一度驚いてみせると、ウォッカは腕を組み、キャンティとコルンはスコープ越しにその“kid”を見た。
「へえ、kidねぇ……。あの子がそうなのかい」
「思ったより……子供……」
噂はかねがねと、やや関心気味にニヤリと笑ったキャンティは銃を下ろした。コルンもそれに続き銃を下ろす。
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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