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このままではおっちゃんが暗殺されてしまうと思ったオレ達は、組織が仕掛ける前におっちゃんの無実を晴らすべく毛利探偵事務所に向かった。
その際にオレはおっちゃんの気を引こうと、探偵事務所の窓めがけてボールを蹴ったのだ。
「どうしてって……たまたまだよ。ちょっとポアロに用事があっただけ」
いつも通りのラフな格好でポアロから出てきた月城さんは、これまた相変わらず感情のよく分からない顔で答えた。
オレは、先日少年探偵団とポアロに行ったきり会えていなかった彼に身構える。
あの日何もなかったら、今のオレはこんな風な態度を見せないだろう。
だがあの日、オレは見てしまったのだ。あの灰原が気を許す瞬間を。月城さんは只者ではないということを。
一般人とは思えない姿を見せた月城さんの正体に、頭を巡らせあらゆる可能性を考えた結果、今はまだ何者なのか確定できる理由は無いが、月城さんはほぼ確実に
その結論への根拠は二つある。
一つは灰原の態度だ。オレはただ単に皆に警戒をしていたからだと思ったが、よく考えれば初めて会う人物にしてもその態度は異常だったと考えても良いだろう。
まず、あいつは月城さんを見てからずっとオレに引っ付いてきていた。また、灰原が店内に入る前にオレに何かを言いかけていた。
それらを踏まえると、初めから月城さんは他の人とは違うと、あいつは分かっていたのだろう。
これは憶測でしかないが、あいつはオレに「月城さんから組織のニオイがする」と言おうとしたのではないだろうか。
もう一つは月城さんの行動だ。
彼は良くも悪くも無関心な態度をよく見せる人だ。だが彼が興味を持った時、そうはいかない。オレと会話したときもそうだが、図々しさに近いものも垣間見えることもあった。
今回は灰原含め、少年探偵団に月城さんは関心を示した。そして灰原に向けて言葉を残した。それも、とても不思議な。
『……良い声ですね、まるでお伽話にでも出てくるような……ね』
それはオレには到底理解の出来ない言葉だったが、灰原には届いたようで、その後は徐々に警戒が解かれていっていた。
だが、月城さんの態度はその言葉以外に、特に変わったようなことはなかったのだ。せっかく灰原に何かを確認したはずだろうに。
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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