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「何か俺に用事があればここに来るかコナン君に伝言してください。俺は例の場所に極力近づかないようにしますので、ご安心を。それじゃあ失礼します」
「ちょ、ちょっと!」
ジョディ先生の呼びかけもお構いなしに、月城さんは荷物を持ち、席を立つ。
だが、席を離れようと踏み出したと思えば、彼は急に立ち止まって一言。
「コナン君、またね」
「えっ、うん」
向けた背を翻しオレに向けて告げられた別れの言葉に、ただ呆然とするしかなかった。
「あっ、月城君!お疲れ様」
「榎本さん、お先に失礼します」
あっという間に姿の見えなくなった月城さんをよそに、オレは残った謎の後味の悪さに唇を噛んだ。
それに加え、最後の月城さんの言葉がやけに心に響いてもどかしい。
「彼、何者なの……」
ジョディ先生の問いかけに、オレは明確な答えを出すことが出来なかった。
***・***・***
少々強引だっただろう。
俺はおおまかな取引が終わったのを良いことに、そそくさとポアロから出てきてしまった。
本当ならばもう少し相手を……、と考えていた事があったのだが、そんなことをする暇がなくなってしまったのだ。
なぜなら、俺の耳がしっかりと着信音――正確には着信を知らせるバイブ音を拾ってしまったのだから。
ポアロから少し歩き、大通りから一本路地に入ったところで俺は携帯を見る。
そこには『姉さんから一件の着信』と表示されていた。
想像はついていたものの、面倒な相手から電話がかかってきてしまったことに大きくため息をつく。
なるべく早く終わらせようと、通話のボタンを押した。
待機音は意外にも短く、すぐに通話が始まった。
「――ああ、姉さん?」
「あら……?てっきり今日は暇していると思ったのだけれど」
不機嫌な反応で電話に出た姉さんは、俺がバイトを辞めて家にでもいるのだろうと予想していたようだ。
それもそのはずで、姉さんは“昨日の計画が盗聴されていたこと“を俺が既に知っていると見当がついているからだ。
実際それは正しい。
俺は昨日の時点でコナン君が組織の計画を盗聴していることに気づいていた。
もちろん誰にもその情報を漏らしていないが。
「ちょうどバイト終わりだったんです。すぐ出れなくてすみません」
姉さんからの着信でその予想を察していた俺は、素直にすぐ電話に出られなかったワケを話す。
姉さんは俺の言葉に少しだけ間を開けてから嫌味に呟いた。
「……あら。また組織がイヤにでもなったのかしら?」
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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