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だが、ジンはその声に一言も触れず「フン」とだけ。
他人の声に興味がないのか、それともこれが
月城は続けて謝罪の言葉を述べた。
「今日の任務、ご迷惑をお掛けしたこと謝ります。すみませんでした」
「気にすることはねぇよ。あの女との付き合いも、お前の大事な役目だろーからな……」
ジンは月城の行動を良く思わないながらも、その理由と原因を含めその彼の目に余る行動を黙認しているようだった。
いつものことだと言わぬばかりにジンは呟く。
月城はジンの嫌味に表情一つ変えずとも、先程よりは多少の尖りを見せた声で尋ねた。
「それで、用件はなんですか?」
少しの沈黙の後、ジンも先程より畏まった声で月城に用件を伝えた。
「……キールとの連絡が途絶えた。FBIがキールを捕らえたと見て間違いない」
「へぇ……。
月城はジンの言葉にコンピュータを起動させる。
軽くFBIをおだてつつ、キールに関する情報をまとめた月城独自の資料を開いたところで、ジンが話を続けた。
「そこであの方からお前へ、取り急ぎの連絡だ。キールを探し出せ。必要ならば『耳』を使っても構わない。とな」
ジンの話した『耳』というキーワードに、資料を眺めていた月城はピクリと反応した。
そして面白いことを聞いたというように月城の口角が上がる。
「……なるほど、そういうことでしたか。最近は退屈していたので嬉しいです」
月城の口から放たれた言葉は、そもそも嬉しいとは何だっただろうかと、そう訊きたくなるような妖しい声だった。
やや誇張気味にも聞こえる嬉々とした月城の言葉に、ジンが鼻で笑った音が月城の耳にもはっきりと聞こえた。
「何か掴んだら俺に報告しろ。今回はお前のその第六感をあの方は欲している。多少信憑性に欠けても目を瞑ってやる」
「……了解。ではこれで――」
今日の一件でいつもは感じないような疲労感を覚え、早く身体を休めたい月城は、間髪入れず電話を切ろうと試みる。
しかし、その狭い隙間を強引にジンは月城へ忠告をした。
「お前に一つ忠告だ。お前があの女のことを慕うのは別に構わねぇ。だがな、あの女に入れ込みすぎるな。折角のお前の脳ミソが腐っちまう……」
「……そうですか」
月城はその忠告に何を思ったのか、どこかさみしげな目で呟いた。
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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