70. 〃 ［見解］ ページ20
「月城君、今日はごめんね〜」
「いえいえ、これくらい問題ないですよ」
「本当に助かる！ありがとね」
一夜明け、月城翔真は珍しく朝早くに喫茶ポアロへと足を運んでいた。
本来ならば午後からであったシフトだが、同僚で先輩である榎本梓から『団体客の予約が入ったから人手が足りない』という連絡を受け、急遽朝からの仕事となったのだ。
「今日、貸切……ではないんですよね？」
月城は開店前の準備を進めつつ、梓に声をかける。
月城の確認に、梓は眉を下げて答えた。
「ええ。だから大変なのよ」
「しかも日曜。人も多いですよね……」
休日の喫茶店は言わずもがな人が多い。
店側の繁盛時といえばそうなのだが、それは結果論。
店員からすればいつもの倍、またはそれ以上働かなければならない。
月城はふわぁとあくびをする。
身なりだけなら健康体そのものだが、身体は正直だ。
後処理は昨日中に一通り終わらせた月城だったが、彼の仕事はそれだけではない。
ましてやそれに加えもう一つ、重要な案件を月城は任されてしまった。
――FBIに囚われたと思われる
月城は心の中で呟き、くすりと嗤った。
＊＊＊
昨日。
月城はコナンと別れた後、特に後をつけられることもなく安全に自宅へと戻った。
作業途中に急いで出かけた為か、まるで昼間のまま時が止まっていたような部屋に、月城は業務を思い出して大きくため息をつく。
さて、出かける前はどんなことをしていたかと、散乱する資料をかき集めながら月城は考える。
そんな時、聞き慣れた着信音が鳴った。
帰ってすぐに投げ出したバッグから携帯を取り出し、その発信者を見る。
『GIN』
表示されたその名前に月城は一度眉を寄せる。
ふう、と息を整えてから電話を取った。
「はい、こちら――」
「俺だ。……今日はご苦労だったな」
月城は名を言う前に電話の相手であるジンに言葉を遮られる。
今日の任務に参加していない月城に対し、ご苦労、というのは少々おかしな話ではあるが、捉え方によってはその意味合いが変わる。
面白くなさそうにそう付け加えられた言葉に、月城は笑みを零した。
「……そうですね。あの人には振り回されっぱなしですよ」
肩をすくめた月城は、得体の知れない声でジンと言葉を交わした。
その声とは、普段の“月城の声”と声質から異なり、加えて優しく柔らかい口調で、それは月城ではない全く別人のものであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます！ (7月24日 21時) (
レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます！ (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
