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俺はそう嘘をついた。
物事に鋭いコナン君を前に嘘をつく事は、墓穴を掘ることに相応しい。
それに、コナン君には以前、軽度の難聴だと伝えてしまっている為、これが嘘だと既に見抜かれてしまっているかもしれない。
それをわかっていながらも、俺は嘘をついた。

何故こんな失言をしたのかは、俺にもわからなかった。


「体調も大丈夫みたいですね」

「うん、もう大丈夫。ありがとう」

小学生に体調を心配をされる高校生もどうなのか……とは思うが、現に心配されてしまっている以上、そのご厚意はありがたく受け取っておくことにした。
営業スマイルではあるが、にっこりと微笑んだのは少年達に好印象だったようだ。
体調が優れているのも示せただろうから、問題ない。

「月城さん、なにかあったの?」

単に自分の知らないところで起きた事に興味があるのか、それとも俺に怪しい点があったから質問をしたのかはわからないが、探るように質問を繰りなすコナン君。
こんな事をすれば何が起こるのか、先の展開を理解していながらも、俺はさも鈍感なフリで飄々と答えた。

「え?……ただ俺が最悪な状況で途方に暮れていた所でこの子達と出会ったってだけだよ?」

「ふーん?」

コナン君の目つきが変わった。
俺はそれを確認すると、この前習得したばかりの手を使い、あたかも自然に会話を続ける。

「あ、そうだ。この前お守りくれたお礼に何かジュース飲んでく?他の皆も良かったら」

折角だからと、俺はコナン君達を自然な流れでお誘いしてみることにした。
俺がそう言うと、食いつくように「いいの?」「やった!」と子供達は素直でありがたい。

お守りのお礼はもちろんのことだが、このお誘いには裏がある。
きっとこの後、俺の失言のお陰でコナン君は、公園の少年達に俺のことを色々事細かに質問するだろうと、俺はそう読んだ。
その中には俺が知られて欲しくない情報も含まれているはずだ。
そう、特に別れ際にすれ違った人物の事など――
それらを俺の目の届く範囲で知れる場所、それはこのポアロ店内しかない。

ポアロの扉を開き、彼らを店内に通す。
それに気付いた榎本さんが彼らに席を案内すると、俺はお冷やを手にそのテーブルに向かった。

「まさかお兄さんがポアロでバイトをしているとは思いませんでした」

「ほんとほんと、驚いちゃった!」

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作者名:izawa | 作者ホームページ:http  
作成日時:2022年7月4日 23時

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